2021年8月31日火曜日

たしかに増えてる



わたしの周りには、
(若年層を除けば)
ワクチンを1回も打ってない人って、
ほとんどいない気がします。
もう打ちました?
が最近の挨拶の定番で、
いやまだ、と答えた人はいなかったような。

ところでアメリカ、
特に南部が進んでないって聞きますが……

『希望のかなた』

カウリスマキのこの作品、
珍しい勘違いなんですが、
「もう見た」と思い込んでいました。
(逆の勘違いはよくあります。
見たのに、「見てない」と思うパターン。)
よく覚えてないから(アマプラで)もう1回見よう、
と思って見始めたら、
見たことない作品だったのでした!
それが、

『希望のかなた』(2017)

です。


舞台はヘルシンキ。
この港町に、
シリアのアレッポから、
空爆で家と家族を失った青年が到着します。
難民としての困難な道中には、
妹ともはぐれ……
貨物船で密航してヘルシンキに着くと、
彼は警察に向かい、難民申請をします。が、却下。
強制送還を言い渡されます。
(アレッポでは、今日も空爆が続いているのに。)
彼は仕方なく、収容センターを逃げだし、
仕事を探します。
そんなとき出会ったのが、
離婚し、レストランを買い取ったばかりの初老の男性。
彼は青年を雇い入れ、
ねぐらも用意します……

カウリスマキらしい、
淡々とした物語。
細かいところで印象に残ったのは、
主人公の青年の家族を奪ったアレッポでの空爆の「犯人」が、
政府軍、
反政府軍、
アメリカ、
ロシア、
ヒズボラ、
IS、
そのどれなのかわからない、という点です。
そうなんですね……

ヘルシンキは、
なんというか、カウリスマキの色調に染まっていて、
ドラマの中とは様子がちがっていました。
そういえば、
主人公の妹の「救出」に関わる運輸会社のドライバーが、
Deadwind で、
事件の容疑者となる社長さんと同じ俳優でした。
(←細かい!)
へんなところで、
フィンランドを感じました!

2021年8月30日月曜日

『アイヒマン・ショー』

アイヒマン関連4本目、

『アイヒマン・ショー』

を見てみました。
アイヒマンを「拉致」する前後については、
『オペレーション・フィナーレ』に詳しかったので、
今度は、その後の裁判そのものに焦点を当てたものを見たかったからです。
(『スペシャリスト』もあるんですね。)


タイトルに「ショー」と入っているので、
もっと娯楽的なものかと思っていたのですが、
全然ちがいました。
考えてみれば、この題材で、
面白おかしくできるはずもありません。

これは…… 胸が締め付けられます。
ナチの非道について、
600万人を殺したことについて、
知らないわけではないし、
かつて『夜と霧』も見たことはありますが、
それでもやはり、
裁判の過程で明らかになる事実、
そしてそれが語られる様子には……

1つ、まったく知らなかったこと。
それは、この裁判(1961)以前のイスラエルでは、
ホロコーストのサヴァイヴァーたちが、
むしろ「蔑視」されていたということです。
あたかも、彼らが、
その一部だったかのように。
そしてそれは、
その経験を語っても、
そんなのは嘘だ、作り話だ、と一蹴され、
そのあと口を噤むよりなかった、
という事情からきているようです。
だからこそ、
このアイヒマン裁判で、
ナチの非道が明るみに出たことの意味は大きかったわけです。

それからこれも知らなかった、
というか、気づかなかったんですが、
この裁判が行われていた時期は、
同時に、
ガガーリンが月に到着し、
キューバ危機が高まっていました。
この映画の主人公たちは、
裁判を中継し注目を集めることが1つの目的でしたから、
ガガーリンやキューバは、
その意味でライヴァルだったのです。
この3年後が、
東京オリンピックです。

アイヒマン小特集、
一応ここで見終わりますが、
それにしても、
モサドやフリッツ・バウアーの活躍の背景には、
「人類最大の罪」と、
「歴史上最大の裁判」が横たわっています。
これからも、
「アイヒマン」は語り直されてゆくのでしょう。

おめでとう、Tsutsugo !



Yoshi Tsutsugo, なんとサヨナラ3ラン!

よかったですねえ! わたしも嬉しいです。
この1発だけでも、海を渡ったかいがありました!

もう、嬉しすぎて、
画像もはみ出しています!

ポリフォニック映画時評

ポリフォニック映画時評 更新あり

総合芸術系「清岡研究室」のメンバーが中心にやっている映画時評です。
新しい記事も出ていますので、よろしければ!

2021年8月29日日曜日

「フランスが正しかった」?

早くも5月から、
フランスに対する協力者たちを避難させていたフランス。
これは今、「正しかった」ようにも見えますが、
どうなんでしょう?


なぜフランスにそれができたのか?
経験値が高かったから。
じゃあなぜ経験値が高くなったのか?
今まで自分たちも、
アメリカと似たようなことをさんざんやってきたから。

もしそうだとすると、これ、
「正しかった」んでしょうか?

『オペレーション・フィナーレ』

昨日見たアイヒマンに関する2本が、
(テーマではないので当然なんですが)
アイヒマン拉致の実行過程を、
ごく簡単にしか描いていいなかったので、
そこが見たくて、これを選びました。

『オペレーション・フィナーレ』(2017)

もちろん、すべてが史実通りだと思っているわけではありませんが。


この映画にも、冒頭近く、
フリッツ・バウアーが登場します。
彼は、あっという間にモサドに追い返されますが、
それでも、もし彼の情報が本当だったら……
という恐れから、
(昨日の作品では、
成功した場合の示威効果を考えて)
オペレーションが始まります。

予想通り、実行は簡単なものではありませんでした。
それは(一応)分かったのですが、
この映画の肝は、むしろ、
彼を捕らえた後、アルゼンチン出国までの10日間の、
主人公とアイヒマンの「交流」にあるようです。
このあたりな、なかなか緊張感があってよかったです。
そしてそのシークエンスにおいて浮かび上がってくるのは、
まさに「凡庸な悪」なのです。


ちなみに、モサドのメンバーの中に、
メラニー・ロランがいました。
まあ、アメリカ映画あるあるですが、
フランス人であるメラニーが、
イスラエル人として英語を話しています。
違和感がないと言えば、嘘になりますね。

2021年8月28日土曜日

フリッツ・バウアー/アイヒマン

『ダブル・フェイス』にモサドが登場し、
アマプラの表示内の

『アイヒマンを追え!』(2015)

が、ふと目に入りました。
そういえばアイヒマンは、モサドに捕まったはず。
で、勢いで見てみました。
そして見終わって、
おもしろかったのだけれど、
ちょっと消化不良のところがあったので、そのまま、
アイヒマンの居所をモサドに教えた

『検事フリッツ・バウアー』(2016)

も見てみました。
両者は、描いている時代が大きく重なっていて、
結果的に、相互補完的になっている印象もあります。
ただ……

正直言って、まだ物足りない。
バウアーがどういう人間で、
どうやってアイヒマンの居所を知り、
その結果どうなったのか、
の表面的な事柄はわかるのです。
ただ、もう一つ深いところに届いて欲しい感じ。

映画としては、
前者の方がうまく組み立てられていると思いました。が、
アイヒマンが使っていた偽名を見つける件が、
意外なほど単純で、ちょっと拍子抜けの間も。
ほんとうは、こんなに簡単じゃなかったんでしょうが。

それにしても、
敗戦したドイツにとって、
ナチの記憶を蒸し返し、それを裁判にかけることは、
大きな苦痛を伴っていたでしょう。
ドイツは、それでも、
きちんとやった、と(一般に)評価されています。
いや、ほんとはそうなっていない、という、
トルコ移民の声もあるようですが。

フランスは、WWⅡに勝ったことになっていますが、
実質は負け組。
だって、たとえばパリだって、
戦争期間の大半は、ドイツに占領されていたわけですから。
フランスでもまた、
戦争の後、戦中の記憶は早く忘れたいものでした。

日本ではどうでしょう?
まず、責任をとるべき「人」が、とらなかった……
現代の政治家たちの無責任、そして責任転嫁ぶりの原点は、
ここにあったと考えることもできるでしょう。

『ダブル・フェイス』

エラン・リクリスは、
好きな監督の一人です。
今までに見てきたのは、

・『シリアの花嫁』
・Les citronniers
・Le voyage du directeur des resources humaines
・Zaytoun
・Mon fils

などで、どれもここで取り上げました。
で今回
(やはりアマプラで配信終了予告が出ているので、急いで)
見たのは、

『ダブル・フェイス』(2017)

です。
(原題は「シェルター」。)
ゴロシフテ・ファラハニが出演しています。


ヒスボラのボスの愛人で、
息子ももうけたモナ。
でも、知りすぎたモナは、
ヒスボラから追われる身に。
で、そのモナに救いの手を差し伸べたのは、モサド。
モサドの手配により、
モナは整形手術を受け、
ハンブルグの隠れ家に身を潜めます。
そのモナの身を守ることになったのが、
仕事中に夫を失ったナオミ。
二人は、次第に心を開き……
というお話。

期待が大きかったせいか、
エラン・リクリスの作品としては、
やや凡庸だと感じました。
女性二人は魅力的なのですが、
物語の全体が、現実の厳しさに裏打ちされていない印象です。
スパイものは、彼には向いていないんじゃ……?

『ケルベロス 紅の狼』

というわけで、
昨日はブラジル映画、

『ケルベロス 紅の狼』(2020)

を見たんですが、
これはまあ、言ってしまえば、
ブラジル版必殺仕置き人、
というところでしょう。


警察の特殊部隊の一員、
サッカー会場周辺の人混みの中で、
彼の幼い娘が撃たれてしまいます。
病院に担ぎ込んだものの、
治療はしてもらえない、
というのは、政界上層部が、
医療費を食い物にして私腹を肥やしているため、
医療はすでに崩壊しているから。
ブラジル国民は、みなこのことに怒っていて……

B級映画ですが、
政界の腐敗に対しての怒りが日常化し、
それが、どこかに出口を求めている、
というブラジルの現状があるのは確かなのでしょう。
「仕置き」だけでは解決できませんが、
せめて、というところでしょうか。

映画作りとして言えば、
劇中で幼い少女を殺すことは、
アメリカ映画では基本しないのでしょう。
(出てきたばかりで、
観客が感情移入する間もない状況なら、
あり得るでしょうが。)
ブラジル映画には、
そんな文法はないわけですね。

2021年8月27日金曜日

1日

朝はパン・ド・ミを食べる。
初めて買ったハムが、
思いのほか厚いのにちょっと驚き、
大谷の41号を急いで YouTube で確認する。
ナイス・ホームラン!

で、
まずはテニス。
Yコーチの要求は高い。
今日の練習は、平行陣からのボレーの打ち分け。
思ったところにはなかなか行かない。
ラストの試合では、1本だけ、
逆クロスにいいショットが打てたけれど、
まあ、1本だけ!

それから大学へ。
時間がなかったので、
ランチは、コンビニのおにぎり。
店員のワカモノは真っ黒に日焼けしていて、
「焼けてるねえ! サーフィン?」
「いえ、サッカーです!」
クルマに戻ると、
テニスで空になっていた水筒に、
冷え冷えのお茶を、
ペットボトルから移し替える。
ナイスなアイディア!

先日見たフィンランド・ドラマ、Deadwind では、
若き男性刑事が、なにかというと、
食事にしましょう、とか、
なにか食べのもを買ってきましょうか? とか、
ちょっとは食べた方がいいですよ、とか、
とっても食事をきにしていました。
これは、いい、と思いました。
わたしも、どんなときでも、
食事(の時間)は気になるタイプ。
でも、映画の中の刑事たちは、
往々にして、
何も食べずに24時間、とか、
いいとこ、思い出したところで食べる、
みたいなことが多くて、
もう12時だからランチにしましょう、
みたいなことは、あんまり言いません。
だから、この若い刑事の言動に対しては、
やっぱりそれ大事だよね!
と思って見ていました。

でもなぜ大学に行くのか?
実は総合芸術系では、
各教員の「雰囲気」を知ってもらうべく、
簡単な動画を作成中で、
今日はわたしが撮影してもらう番なのでした。
写真家でもある院生におまかせで、
無事終了。それから、
久しぶりに会った同僚の先生たちを雑談を1時間。
メインは、ブルデューについて。
今もバリバリ有効ですね!
という点で意見が一致。

そして帰り道。
どうしてもおなかがすいたので、
おやつを買いにコンビニによって、
あれこれあれこれ迷って、
結局、肉まん!
夏なのに!

で、夕食後は、
将棋warsを1局。
楽勝かと思って指していたら、
きれいに逆転負け。

それからブラジル映画を見始める。
どうかなあ、と思いながら見ていると、
突然の急展開にびっくり。
見続けることに決定。

で、今。
昨日買ったメロンが冷えた頃……

「稼げる大学」

「稼げる大学」。
聞いた瞬間にイラッとします。


国家も、大学も、
「株式会社」ではありません。

大学は、新自由主義の魔の手から自らを守るだけでなく、
社会をも、
その地獄から救い出すための、
砦とならなければ。

なぜそんなことする?

アメリカ軍、どういうつもり?


県や宜野湾市は焼却処理を求め、排水を認めていない。」
のに、「放水」したと。
植民地?

ジュラ紀

昨日、近所の丸善で衝動買いしたのは、


ジュラ紀のアンモナイト。
ジュラ紀って……いつ!?

発掘場所は、フランスのモントルイユ=ベレ。
アンジェの近くですね。

これで1辺10センチ弱。
さて、どこに飾ろう?
(でもちょっと羊さんみたい!)

2021年8月25日水曜日

『シンク・オア・スイム』



そういえば見逃してた!
という映画が、アマプラにありました。
ラッキー!

『シンク・オア・スイム』(2018) Le Grand Bain

これは、物語以前に、
出演陣が豪華で目を引きます。
また、ジル・ルルーシュ(←好きな俳優)にとっては、
久しぶりの監督作品です。


物語はシンプルで、
それぞれに「問題」を抱えた中年(+α)の男たちが、
男子シンクロナイズド・スイミングのチームに参加し、
そのチームで世界選手権(!)を目指す、というものです。
この縦糸に、
いくつもの「問題」が横糸として描かれてゆきます。
また、チームのコーチとして、
2人の女性が関わってきますが、
彼女たちもまた、「問題」を抱えています。

(今、カッコを付けて「問題」と書いているのは、
それが本人にとって、
つまり主観的に「問題」だと捉えられている、
という意味です。
客観的には、いわゆる「問題」というものとは違う、
という事情も含まれています。)

男たちは6人(+1)。
・マチュー・アルマリックが演じるのは、
うつ病で2年間仕事をしていないベルトラン。
彼には妻(マリナ・フォイス!)と2人の子供がいます。
・ギヨーム・カネが演じるのは、
愛されなかったために、愛することができない男、
否定され続けたために、否定することしかできない男です。
その犠牲となるのは、
彼の妻(エリカ・サントゥ*)と息子、
そしてもちろん彼自身です・
・ブノワ・ポールヴールドが演じるのは、
すでに4社を倒産させたことのある、無能な社長。
愛人を作り、「社長らしく」振る舞うことを望みますが、
実体は空虚です。
・ジャン=ユーグ・アンドラードが演じるのは、
どこにでもいるような、
ミュージシャンの夢を諦められない中年男性。
離婚され、娘にも邪険にされ、
今は娘の通う中学の給食室で働いています。
ある日娘は、父親に言うのです、
パパはデヴィッド・ボウイじゃない、と。

そしてコーチ二人は、
ヴィルジニー・エフィラとレイラ・ベクティという、
豪華で、意外な組み合わせです。
エフィらの方は、元アル中で、
今も禁酒者の会に出席しています。
(マット・スカダーが思い出されます。)
そして彼女が追いかける男からは、
ストーキングで警察に訴えられてしまいます。

この映画も、
昨日見た『ウィークエンドはパリで』に似て、
設定はベタなのに、
丁寧に、深みを持って作られています。
両者とも、お説教くさくないところがいいです。

フランスで大ヒットしたようで、
それには豪華キャストも一役買っているでしょうが、
実際、作品自体も十分楽しめるものでした。
(俳優の中で一番印象に残ったのは、
ジャン=ユーグ・アンドラードです。
あの、『ニキータ』の時の美青年が、
やさぐれたロッカーに成り果てていようとは!)

*エリカ・サントゥ
彼女は、この映画で、主人公の恋人役でした。

2021年8月24日火曜日

『ウィークエンドはパリで』

アマプラ散策中に、

『ウィークエンドはパリで』(2013)

を見かけ、
「あと8日で配信終了」という言葉に脅迫(?)されて、
(正直なところ、あまり期待せずに)
見てみました。
なんと、引き込まれました。


物語は、
バーミンガムの熟年夫婦が、
結婚30年目にパリ旅行を敢行し、
そこで、お互いの不満、不安、屈託、をぶつけ合うというという、
まあ、おそろしくベタな設定です。
(なので、期待しませんでした。)

ただ、見終わってみて、
かなりよかったことを考えると、
ロジャー・ミッシェル監督は、
こんなベタな設定でもオレならできるという、
かなりの自信があったんじゃないかと感じました。
こんな設定でここまでできるのは、
やっぱり感心します。
(もちろん、監督とコンビの脚本家、
ハニフ・クレイシの力も大きいのでしょう。)

1点、この夫婦が、泊まるホテルを決める場面、
タクシーで「ここで止まって!」と言うのが、
アドレーヌ寺院の脇の道なんですが、
タクシーを降りると、
そこはプラザ・アテネの前でした。
ちょっと嘘過ぎましたね。

(もう、数十年前、
父親の仕事の鞄持ちとして、
一緒にパリに行ったことがありました。
そのときは、文化事業を支援する有力スポンサーがついていて、
井上靖氏や大江健三郎氏らもいらっしゃったので、
宿泊先は(付き添いのわたしまで、)プラザ・アテネでした。
あんな豪華なホテル、
もう泊まることはないでしょうねえ……)

2021年8月23日月曜日

新しいオウチ


マノンに、新しいオウチを買ったんですが、
めったに入ってくれません(涙)

副反応、ほぼナシ

ワクチンの2回目接種から、
今、28時間ほど経ちました。
今日の午前中は、
接種した左肩が熱を持って痛かったのですが、
(冷えピタも貼って)
午後にはだんだん治まってきました。
熱もないようです。
あるのはダルサだけで、
これは、すごく睡眠不足の時と同じくらい。
午前中にも、午後にも、
それぞれ30分ほど寝て、
座って映画を見られるくらいではあります。
とっても大変だった人の話もけっこう聞きますから、
これはラッキーだったのでしょう。
(応援メールもいただきました。
Merci bien !)

で、成瀬巳喜男の、

『浮雲』(1955)

をネトフリで見てみることにしました。
これは、以前も見ています。


なぜ見たのか?
それは、よく覚えていなかったからです!

この映画、時代設定は1946年で、
つまり敗戦の翌年です。
で、公開は1955なわけですから、
観客は、ほぼ10年の時間的距離を置いて、
「あの頃」を振り返ったのでしょう。
これは、その当時の記憶がない、
つまり生まれていなかったわたしたちが見るのとは、
随分意味合いが違うのでしょう。
ヒロインはダメな男に向かって、

「日本の男ってみんなおんなじだわ」

と吐き捨てるのですが、
このセリフには、
時代的なコノテーションがあるように感じられます。

それにしてもこの男は、
妻と
仏印にいるときは、
現地のメイドの女性と、
日本からやってきた若い女性と、
そして日本に戻ってからは、
伊香保温泉で若い既婚女性と、
関係を持ちます。
そして、その誰一人に対しても、
正面から向き合うことはしません。
成瀬巳喜男監督は、
そういう「ダメな」男を描いたのでしょう。
まったくいい加減なことを言いますが、
それは当時の「日本」の比喩なのでしょうか?

2021年8月22日日曜日

2回目

というわけで、今日は2回目のワクチン接種を受けてきました。
3:15~3:30
という枠だったので、
あえて、(その直前までスタバでねばって)
3:25頃に行ったところ、
予想通り、受付にも問診にも接種にも、
だれ一人並んでいなくてあっという間でした。
で、
すでに打ったあたりが少し痛い感じですが、
問題は明日、明後日ですね。
わたしの周囲では、
肩が痛い以外なんでもなかった、
という話から、
ちょっと熱が出た、
頭が割れそうだった、
3日間、だんだん熱が上がって39度になった、
人生で経験のない悪寒がした……
など、さまざまな「報告」を聞きましたが、
まあ、それでも、3日後には戻ってきているので、
多少のことはいいことにしましょう。
(とはいえ、何もないことを希望しますが!)

さて、どうなるでしょうか!?

2021年8月21日土曜日

『忽然と』

ネトフリで、久しぶりにフランス・ドラマを見てみました。

『忽然と』(Disparu a jamais)

出演者欄に、ニコラ・デュヴォーシェルの名前があったので見始めたのですが、
彼はなんと、第1話の冒頭で死んでしまいました!
(ただまあ、その後まったく出で来ないわけではありませんが。)

話は錯綜していて、
わたしには、かなり無理矢理なストーリーに感じられました。
1話ごとに「主役」を入れ替えていくような作りなんですが、
それを実現するために、
各人の過去も盛ってしまった印象です。

また、もっと見たかったと感じたのはニコラだけではなく、
主人公の恋人役だった Nailia Harzoune もそうでした。
彼女もまた、第1話で姿を消してしまうのです。

Nailia は、今調べてみたら、
以下の作品にも出演していました。



(←この映画、アマプラで見られます。『メイド・イン・フランス』)


特に『メイド・イン・フランス』では、
アラブ系組織の人間として演じていることから分かるとおり、
彼女は「見て分かる」アラブ系です。
で……

今回の『忽然と』では、
実は「ジュディトゥ」は偽名で、本名は「ノラ」、
かつては売春婦だった時期も……
なんていう過去が暴かれるんですが、
これは、アラブ系女性を描くときの、
20世紀によく見られたパターンで、
その意味ではかなり(悪い意味で)「古い」と
言わざるを得ないでしょう。
物語の主要人物でアラブ系なのは彼女だけで、
その彼女が娼婦なのです……

2021年8月20日金曜日

「大江戸の火消し」

先日の「青少年コンサート」、
そういえば楽器の音色紹介もありました。
クラシックの曲だけでなく、
「パプリカ」や「トトロ」などもあったのですが、
意外だったのがティンパニーの選曲。
なんと Smoke on the water のテーマでした。

で、
帰ってから、YouTube で、
かつて聞き込んだ Live in Japan の Smoke on the water を聞き、
そのときふと見ると、
「和」の衣装を着込んだ人たちが並んだ画像が。
何だろうと思って聞いてみると……


おもしろい!
10年前の動画ですが、さっき知りました。

『ヴァルハラ殺人事件』(未了)

北欧ドラマ特集、
バルト3国とエストニアに続いて、
アイスランドのドラマを発見。
見てみることにしました。が……

『ヴァルハラ殺人事件』

第1話は、時間の省略の仕方もスマートで、
主演の女性刑事の屈託や行動原理も伝わってきて、
期待が膨らみました。
ところが、第2話になると、
デンマークから派遣された男性刑事が加わり、
ちょっとバランスが崩れます。
しかも、この刑事に魅力がない。
過去を引きずっているのは分かりますが、
その過去と現在の雰囲気の合致の仕方が浅い感じで、
引き込まれません。
で、残念ながら、第3話で脱落と相成りました。

ただ、ここまで見ただけでも、
アイスランドの風景はとてもよかった。
事件現場に向かう道が、
雪と氷で覆われた起伏の中を、
一筋、くっきり延びていたり。
だからこそ、おもしろいドラマだったよかったのに!

2021年8月18日水曜日

『ラストウォー 1944 独ソ・フィンランド戦線』

一昨日見た『1944 独ソ・エストニア戦線』の流れで、

『ラストウォー 1944 独ソ・フィンランド戦線』(2015)

を見てみました。


この映画は、ラップランド戦争を背景に、
フィンランド人の助産婦と、
ドイツ兵の恋愛を縦軸に作られています。
横軸はもちろん、ナチの、戦争の、正視に耐えない非道です。

ドイツ兵を演じているのは、
『Deadwind』でヌルミ役を演じていたラウリ・ティルカネン。
イケメンです。
ここで彼は、
あのバビ・ヤールでのユダヤ人大虐殺に関わり、
そのために精神を蝕まれている兵士の役です。

かなり重苦しい映画です。
それは戦争のせいばかりではなく、
フィンランドの田舎にはびこる古い価値観などのせいでもあります。
ただ、エストニアと(ある程度は)同じように、
ソ連とドイツの間に挟まれ、
二重の敵に悩まされるフィンランドの事情はよく伝わってきました。

WWⅡと言うと、
真珠湾、ガダルカナル、インパール、ヒロシマ、
などがまず思い出されることも多いわけですが、
ドイツなどとこれだけ距離が近いと、
まったく違う景色が展開しているように感じます。

「青少年コンサート」

今日は、近場で行われた
「青少年のためのコンサート」
に行ってみました。
入場料が 1.500円と格安で、
感染対策もバッチリでした。
で……

生のオーケストラの音を久しぶりに聞いて、
なんだか、しみじみしてしまいました。
1階の一番後ろに座ったんですが、
一応コンサートホールなので、
音が、
ホール全体を満たして響いているのがわかります。
(そういえばこんな感じだった!)
また、金管がぶわーっと吹くと、
その音圧を胸に感じるのです。
ああ、これがオーケストラ……
青少年向けですから、
いわゆる大曲はナシで、
アイネ・クライネや、スラブ舞曲など、
小さな曲が多いのですが、
それでも、なんだかとてもワクワクしました。

で、メインは『ピーターとオオカミ』。
青少年向けなら、
やっぱりこれですよね。
で、わたしは、随分古いですが、
かつてデヴィッド・ボウイがナレーションを担当していた盤を愛聴していました。
その頃のこともちょっと思い出し、
でもこうやって生で聞くと、
たしかにプロコフィエフ風の
(って当たり前なんですが)
旋律や音の組み合わせが繰り出されてくるのを感じ、
また楽しくなるのでした。

(でも、待てよ、
これって「青少年」に馴染みやすいのでしょうか!?)

そしてアンコールは、
J・シュトラウスのラデツキー行進曲。
楽友協会大ホールにも負けない(!)手拍子の中、
とても盛り上がって終わりました。

それにしても、
こんな格安料金で、
しかも、客席は半分空けていて、
とても儲かる感じではないのに、
未来の音楽ファンを育てるため、
指揮者もオケのメンバーもがんばっていて、
ほんとに頭が下がりました。
わたしも楽しかったです!
やっぱりライブはいいですねえ……

「ダブルスタンダードを使ってはならない」

ただしタリバンについては、
その実体がなかなか分かりにくい。
日本のメディアのほとんどは、
欧米からの(バイアスのかかった)情報に頼っているし。
またタリバンも、
たとえばその「広報」と「現実」には隔たりがあります。
そしてその隔たりは、2通りあるようです。
つまり、
「広報」が、悲惨な「現実」を隠蔽する場合と、
その逆に、
「現実」が、むしろ「広報」より寛容で、柔和である場合、です。


以下、内藤正典先生の twitter から。

私は昨日のタリバンの記者会見を額面通り受け取っていない。
現実には彼らの示した寛容に反する事態は起きる。
だが、ジャーナリストは予断をもって記事を書いてはならない。
「なるに決まってる」という思い込みが欧米では急激に増幅されているが、
彼らはアフガン人を殺した側であり、見捨てた側である。

90年代のタリバン支配の前は略奪、誘拐、性的暴行の嵐だった。
タリバンは秩序の回復を実現したから一時的にせよ政権を取った。
だがイスラム神学生あがりの彼らは、
イスラムの法秩序にしか目を向けず、それに反すると処刑した。
だから恐怖の的になった。
今回、統治を変えるかどうか見定める必要がある

だが、日本を含め欧米諸国はタリバン政権を監視するなら、
イスラム圏に対してダブルスタンダードを使ってはならない。
これまで、サウジ、UAE、カタール 等のアラブ産油国に
一度でも女性の人権を監視するという態度で迫ったことがあったか?
石油を持つ国とは諍いを起こさず沈黙していたではないか?

日本のメディアは、まだタリバンと話をしていない。
欧米諸国の報道を追随する姿勢では、
彼らの偏見を上書きすることになる。
欧米は「自由」をもたらしたが、同時に加害者側であり、
自分たちの戦争犯罪が明るみに出る事を恐れている。
そのためタリバンを叩こうとする面があることも忘れてはいけない。

30年前、イラクの独裁者フセインが、クウェートを占領し、
欧米諸国は奪還のために湾岸戦争を起こした。
戦争を起こすに当たって、印象的な映像があった。
一つは原油まみれの水鳥の姿、
もう一つは涙ながらにフセイン軍の暴虐を訴えるクウェートの少女。
二つとも嘘である事が、後に暴露された

二十年前のイラク戦争の時など、さらに酷かった。
フセイン政権がアルカイダとつるんでいる。
大量破壊兵器を隠匿している。
その「証拠」が米国によって国連安保理に提出され、
後に捏造と虚偽である事が暴露された。
米国に追随した英国は大恥をかかされた。
同盟国さえ欺いた過去を忘れてはいけない。

2021年8月17日火曜日

「見渡せば女性たちの怯えた顔と、それを面白がる男たちの醜い顔ばかりだ」

「彼らの話を聞いたとき、私は涙が止まらなかった。
ある家族は戦争で息子を失い、
カブールまでのタクシー代を払うお金がなかったため、
交通費と引き換えに息子の妻を差し出したのだという。
ひとりの女性の価値が、旅費と同等になどなろうか。

そして今日、
タリバンがカブールに到達したと聞き、
私は奴隷になるのだと思った。
彼らは私の人生を好きなように弄ぶことができる」

2021年8月16日月曜日

『1944 独ソ・エストニア戦線』

『Deadwind』 の中では、
ヘルシンキの対岸のタリンが登場していたわけですが、
考えてみれば、
エストニアのことをあまりよく知りません。
あの『クロワッサンで朝食を』(原題「あるエストニア人女性」)
だけでは、どうしても足りない。
というわけで、
これを見てみました。

『1944  独ソ・エストニア戦線』(2015)

結論から言えば、感動しました。


エストニアは、
たとえば13世紀にはデンマークに、
16世紀にはロシアに侵略され、
その後はスウェーデンとポーランドによる分割支配を経て、
18世紀初めにはロシアに占領され、
WWⅠの際にはドイツに侵攻され、
戦後、ついに独立を果たします。が、
WWⅡが始まると、
1940-41 にはソ連に編入され、
「反乱分子」は強制移住or殺害させられてしまいます。(約6万人)
しかし、
1941,6月になると、ドイツ軍が侵攻・占領を果たします。そして
1944、ドイツの力が落ちたとみるや、ソ連が再侵攻し、占領。
またも「反乱分子」を、シベリアの強制収容所などに送り込みます。(約12万人)

こうして(とても雑ですが)見てみると、
エストニアが味わった苦難は、
ちょっと想像を越えるものがあります。
それを端的に示しているのが、やはりWWⅡの時代で、
ソ連編入時代には、
エストニアの若者たちが兵士として赤軍に動員(55.000人)され、
またドイツ占領時代には、
今度はドイツ軍として動員(72.000人)されたのです。
そして……
1944年、ソ連がエストニアに再侵攻した時、
この両者、つまり、
ソ連軍に入れられたエストニア人と、
ドイツ軍に入れられたエストニア人が、
まさにエストニアの土地で、
互いに殺し合う羽目になったのです。
この映画が描くのは、まさにそうした状況です。

若いエストニア人兵士は言います、
「これは誰が始めた戦争なんだ?」と。
それは、今エストニアを支配しているヒトラーなのか、
フィンランドを攻撃し、バルト三国やポーランドを占領したソ連なのか?
いずれにせよ、これを始めたのは自分たちではない。
これは一体、何の戦争なんだ?
おれたちは、いつかまた独立できるのか?

戦闘場面は、ちょっときれいすぎる気もしますが、
それを差し引いても、
これはたしかに、
作られねばならない映画だと感じました。

(そう、それはそうなんですが、
やっぱり「国家」なんですね、ここで人間が絡め取られているのは……)

2021年8月15日日曜日

『ザ・クライム -死者は静かな水のなかで』

ネトフリ・ドラマ、
ちょっとポーランドに戻って、
(というのも、3話×2,で、すぐに見られそうだったからなんですが)
これを見てみました。

『ザ・クライム -死者は静かな水の中で』

このドラマで、まず興味を引かれたのは、
その舞台です。


長く伸びているヘル半島の先端に、
ヘルの街(赤い目印)があります。
見て想像できるとおり、
かつては軍用地だったのですが、
今は、リゾート地として人気です。
まあ、半島全体、ほとんど海岸ですからね。
で、
このヘルの海岸で、
幼い子供ふたりと遊びに来ていた若い母親、アグネシカが、
水に浮かぶ水死体を見つけてしまいます。
彼女らは近くのかなりきれいな家に住む一家です。
そして捜査が始まると、
このアグネシカと、刑事が、
かつての同級生であることが判明。
しかも刑事は離婚していて、
アグネシカの方も、夫と上手くいっていないのでした……

謎解きは、
まあ……、ふつう、かな。
そして刑事役の俳優は、わたしにはイマイチ。
ただ、アグネシカ役の女優(マグダレーナ・ボチャルスカ)が、
なかなか魅力的。


ちょっと、ターコイズ・ブルーのような色の瞳で、
またそんな感じの色目のカーディガンを羽織っていたりで、
おしゃれさんです。
背も高いし。
(ただし彼女は糖尿病で、毎日注射を打つっていうのが、
あまり見たことがない設定でした。)

ポーランド・ドラマとしては、
1ヶ月前に見たこちら、


のほうがずっとおもしろいですが、
ヘルという土地を知れたので、
こちらのドラマもよしとします!

BAD LUCK CAN HAPPEN TO ANYBODY.

フィンランドのドラマを見終わって、
たまたま、ネット上で、
こんな「広告」に出会いました。


          <BAD LUCK CAN HAPPEN TO ANYBODY.>



ここに写っている女性は、
タルヤ・ハロネン元フィンランド大統領、だそうです。
元大統領が、協力しているわけですね。

この写真が示している通り、
生活保護など、公的支援を受けることは、
誰にもでも起こりえます。
共助のためにこそ、
人間は「社会」を作ったのだと思います。

(サッチャーは、「社会」なんてない、
と言いましたが、
彼女にとっては「ない」としても、
「ある」と考えるべきだと思っています。)

2021年8月13日金曜日

『Deadwind  刑事ソフィア・カルピ』<2>終了


<1>に続いて、<2>も見終わりました。
作品の構図には、
(まあ、主演の二人が同じなので)
<1>と近い部分もありましたが、
結論としては、なかなかよかったです。
作品を貫く苦さが、人間の弱さと深く共鳴していて、
それをムリに説明しようとせず、
ザッと投げ出してしまうところも
わたしは好きでした。

今回は、
ヘルシンキだけではなく、
フィンランド湾を挟んだ対岸のタリン(エストニア)も舞台になります。
その2つの港町を往復する船も。
さらには、サーレマー島(エストニア)、
もちろんエストニア人も登場します。
フィンランド人と彼らは、英語で話したりします。
(わたしたちが、中国人や韓国人と英語で話す感じでしょう。)



以下ネタバレ**********************

さっき「苦い」と書きましたが、
それもまた、いくつかの形で現れます。
ソフィアの、そして相棒ヌルミの、
個人生活にまつわるものが出発点です。
まずソフィアが抱え込まざるを得ない問題は、
亡き夫の連れ子であるヘレナが関わるものです。
実は、麻薬常習者である彼女は、
あるとき、死んだ売人が隠していたクスリを盗み、
それを売りさばこうとします。
それだけでも相当ヤバイのに、
死んだ売人の仲間が現れ、ヘレナは窮地に。
しかも、彼との「仕事」を強制された彼女は、
ついに、彼を殺してしまうのです。
自分が警官であるのに、
娘から殺人を犯したと告白された時の気分て……。
でもソフィアは、自首しろなんて言いません。
ゼッタイ誰にも言っちゃダメとかたく言いつけ、
実際隠し通せるかに見えたのです。が、
やはりそうは問屋が卸しません。
ヘレナは容疑者として連行されるのですが、
それを担当したのは、
なんと、ソフィアが愛し始めているかもしれない相棒、
ヌルミだったのです。
Mmm、おそろしく苦いです……

刑事物として、
子供が何かひどいことをやらかす話は、
今までにもあったでしょう。
ただ、刑事が女性であり、
子供が娘であり、
犯行を暴くのが同僚、というのは、
見たことがないような気がします。
そう、ソフィアだけでなく、
ヌルミにとっても、かなり苦い経験でしょう。
彼にとって、ソフィアは命の恩人でもあるのです。

ただ急いで付け加えますが、
この作品にミソジニーの気配はありません。
ただ、凍てつく街に、人の営みがあり、
否応なく、苦さを噛みしめることになるのです。

2021年8月12日木曜日

『めし』


そういえばこれ、
成瀬巳喜男の代表作の1つとされているのに、
長らく見ずに来てしまいました。
で、遅ればせながらネトフリで……

『めし』(1951)

敗戦後6年、
まだ、「焼け跡」の記憶が生々しい時代が舞台です。

三千代(原節子)は、
親に反対されながらも初之輔と結婚し、
それまでを過ごした東京
(と言っていますが、三千代の実家は矢向、
川崎の近くで、神奈川県です。)
を、夫の仕事の都合で離れ、
今は大阪の長屋住まいです。
毎日毎日、
食事の準備、片付け、掃除、洗濯……ばかり。
(もちろん掃除機も洗濯機もありません。
ぞうきんと、洗濯板です。)
もうずいぶん、服など買っていませんし、
出かけることもほとんどありません。
これがわたしの望んでいたもの?? 
三千代は、むなしさとともに自分に問いかけるのでした。


そんなとき、夫の姪・里子が、
家出して転がり込んできます。
夫にしなだれかかり、
ただ飯を食べ、夫が与えたらしい小遣いで遊び回る里子。
しかも夫は里子を甘やかすばかり。
三千代は、ついに、
いったん東京に帰る決心をします。
東京で働き始めれば、
もっと充実した生活ができるはず……

この映画、「ふつう」に見れば、
つまり今の時代から見れば、
ラストの三千代のモノローグは、
まったく時代遅れの感慨に満ちています。
が、それは時代的制約もあるわけだし、
そもそも、このモノローグが映画のポイントだとも言い切れないのでしょう。
そんな、映画が始まった瞬間に予想できる陳腐な言葉より、
原節子が時折見せる深く陰った表情の方が、
より印象に残るのですから。

また、大阪と東京の対比、
労働者の意識、
戦争未亡人の苦労、
就職難、なども、
うまく挿入されていると思いました。

ちょっと調べただけですが、
さすがに有名作品だけあって、
いくつもの論文が書かれているようです。
日本映画における「妻もの」の嚆矢だとか、
原節子はここで、
「理想化された未来/過去をスクリーンに投影する(……)超越的身体」
なのだとか。
特に後者は興味深いと思いました。

2021年8月11日水曜日

『しとやかな獣』

ネトフリ内をぶらぶらしていると、
あと2週間ほどで配信終了、となっている映画があり、
見ると奇しくも「1962年」、
つまり一昨日見た『5時から7時までのクレオ』と同じ制作年です。
で、見てみました。

『しとやかな獣』


(←全編版ですが、画質は……)

これはほとんど密室劇で、
団地5階の2DKから出ることはほとんどありません。
ただし、窓から遠い街並みや空は見えるし、
玄関の外側の廊下、
あるいはその廊下から続く階段なども頻繁に現れるため、
「密室劇」にありがちな閉塞感は、
かなり和らいでいます。
もちろん閉塞感があるのは間違いないんですが。

前田家は4人家族。
父親の徳三はもと海軍中佐で、50歳を目前にしてなお、
なにか一発当ててやろうと企んでいます。
ただ実際にやることといえば、
息子や娘をそそのかし、
詐欺や横領を働かせたり、
妾になってパトロンから搾り取らせたりします。
つまり、意地汚くちっぽけなオヤジです。
妻も妻で、
そうした夫や子供たちの生活ぶりについて、
応援こそすれ道徳的な態度はみじんも見せません。
そしてこの状況の中に、
息子の上司である男や、
息子が貢がされていた女性や、
娘の愛人である作家などが押しかけ、
彼らが持ち込む「苦情」が、
物語の進展をドライヴすることになります。

これ、なんとおもしろいです。
スピード感もあり、
セリフのスピーチレベルも多層的で、
敗戦後17年という、
近くも遠くもない距離感も伝わり、
風俗的でありながら普遍的な要素も色濃いという、
かなりよくできた作品だと思います。
カメラワークも変則的で、
それを生かすために、
セットもかなり風変わりなものに見えます。
つまり、実験的でもあるのでしょう。

監督は川島雄三、
といえばこれです。


こちらもおもしろかったです。

MESSI À PARIS


まさかこんな日が来るとは!

飛行場での写真だそうです。
ちゃんとTシャツ着てくるところがカワイイ!

2021年8月9日月曜日

『5時から7時までのクレオ』

今日もまたアマプラ内散策中に、
そういえば昨日は右岸派を見たから、
今日は左岸派でも見てみるか、
という軽いノリで見始めたのが、

『5時から7時までのクレオ』(1962)

です。
アニェス・ヴァルダ監督の作品で、
クレオという女性の、
まさに5時から7時までを描いています。


パリ。
若くてきれいなクレオは新進の歌手。
でも、今日は、7時に、
医師から検査の結果を告げられることになっていて、
彼女はガンじゃないかと心配しています。
で、
落ち着かない気持ちのまま、
それでもショッピングで少し元気になったり、
愛人と話したり、
仕事仲間と次の作品の打ち合わせをしたり、
一人で散歩したりします。
そしてやがて、7時が近づき……
という、すごくシンプルなお話。

見ている間、
おもしろくないと思ったり、
ちょっとおもしろいと思ったり、
パリの街並みがきれいだと思ったり……
揺れました。
で今も、なんとなく評価が定まらない感じ。
この時代らしいペダンティックなところは鼻につくし
(といってもこれは、
昨日の『柔らかい肌』のほうがひどかったですが)、
モノローグの入り方も不自然だし。
ただ、単純に言って、
アルジェリアの戦線が意識されているのは、
クレオが死を恐れているのと見合っていてよかったし、
クレオはなかなかきれいで、
パリの街中でも浮いているくらいですがそれもよかったし。
でもこの映画の場合は、
もう何日か経っても、
結局評価は曖昧なままという気がします。

クレオを演じたコリーヌ・マルシャン。
実は今調べて気づいたんですが、
この映画に出ていました。


主人公シモンの母親役です。
(だとすると、シモンを演じたカド・メラッドはアラブ系なので、
彼女の夫もアラブ系だということになります。)
ただ残念ながら、よく覚えていません!
DVD(La Mélodie)を見つけ出して、確認したいと思います。

『柔らかい肌』

トリュフォーの、1964年の作品、

『柔らかい肌』

を、学生時代以来、40年ぶり(!)に見てみました。
(といっても、アマプラを内をぶらぶらしていて、
ふと目にとまったので、
勢いでそのまま見た、というだけのことなんですが。)


有名な評論家ピエール・ラシュネ。
彼は、パリの高級アパルトマンで、
妻や、まだ幼い娘と暮らしています。
(住み込みらしい?ベビー・シッターもいます。)
そんな彼が、講演旅行にリスボンに出かけた際、
あるフライト・アテンダントに一目惚れし、
また彼女、ニコルの方も、
実はこの評論家のファンだったことから、
「浮気」が始まります。
そしてピエールはどんどんニコルに嵌まっていき、
ニコルとの旅行が妻にばれたのをきっかけに、
もうニコルとの結婚まで突っ走る勢いです。
が、
実はニコルは「浮気」を楽しんでいただけで、
結婚なんて考えてもいませんでした。
一方、夫を愛しながら裏切られた妻は、
猟銃を持ち出してピエールに会いに行きます……

Mmm、どうなんでしょうねえ。
世評の高い映画で、
たしかにニコルはきれいだし、
サスペンスもほどよく作られているのですが、
好きかと言われれば、そうでもない、という答えになるでしょう。
まず、この映画は、
お金のあるインテリの物語で、
まあ、お気楽ね、という印象があります。
アルジェリア戦争が終わって2年ですが、
そういう雰囲気はまったく感じません。
ピエールは、バルザック、ジッド、の話をして、
モーツァルトについての文章も褒められたりします。
「ハイブロー」な生活なんでしょう。
また、描かれるのはいわゆる三角関係なんですが、
男(ピエール)が惰弱で、
映画はその惰弱さを突き放すのではなく、
擁護しているように感じます。
ナルシスティック、と言えば言えそうです。
そして女性ふたりの一方は、
美しいけれど身勝手で、
他方は、直情径行で危険、という風に描かれます。
ミゾジニー、ないし女性恐怖の匂いがします。
とても有名な作品なので、
こうした指摘はすでにあるだろうと思いますが……

あと1点、
繰り返し挿入される音楽の、
なにかがほぐれてゆく感じは、
この映画に流れるものと合っていないと感じました。

1964年と言えば、
もちろん東京オリンピックの年です。
シトロエン、飛行機、テレビ、など、
時代の小物も使われています。


2021年8月8日日曜日

ナショナリズム

国民はイメージとして心の中に想像されたものである。

国民は限られたものとして、また主権的なものとして想像される。

たとえ現実的には不平等と搾取があるにせよ、
国民は常に深い同志愛として心に描かれる。

この限られた想像力の産物のために、
過去2世紀にわたり、
数千、数百万の人々が、
殺し合い、
あるいはみずから進んで死んでいったのである。
(ベネディクト・アンダーソン)


ナショナリズムは国民の自意識の覚醒ではない。
ナショナリズムは、
もともと存在していないところに国民を発明することだ。
(エルネスト・ゲルナー)


フランスには、
フランク族の出身であると十分に証明できるような家族は、
十もないのだ。
(エルネスト・ルナン)

「ナショナリズム」という語は、
19世紀の多くの辞書には見つからないそうです。

le passe sanitaire

フランスでは、明日(9日)から、
カフェやレストランに入るのにも、

le passe sanitaire(衛生パス)

が必要になります。
この passe は、
ワクチン接種済みの証明書と、
PCR検査陰性の証明書がセットになったもののようです。


もちろんフランスですから、
反対運動もあります。


日本では……
とにかく、今は接種の数を増やすことですね。
(わたしは、第1回の接種から約2週間経ち、
少しは効果があるはずの時期に入ってきました。
もちろん、マスクなどの生活習慣は変りませんが。)

「難しいし、おもしろくない」(!)

藤井王位と並んで、
現役最強と言われる渡辺明名人。
彼が、序盤の定石を解説してくれる動画がこれ。


名人はこの動画を、
「難しいし、おもしろくない」
と言っていますが、
いやいやいや、
難しいですがおもしろいです。
名人の言う、

「これを指すと、手が広がらない」

という指摘、
なるほどと思いました。
まだ序盤、形を決めすぎてはダメなんですね。
(まあ、わたしなどのレベルでは、
流れるような形の変幻など望むべくもないので、
ぎごちなく歪な形に収まってしまうわけですが……涙)

でも将棋って、
「人生」に例えやすいです。
たとえば、2つの手があって、
どちらがいいというのでもない場合、
どちらを選ぶ場合でも、

「これも一局」

なんて、しばしば言われます。
大学に入るとき、
仏文にしようか、物理にしようか……
どちらを選んでも、
それはそれで一つの人生ですね。

あと、

「将棋は、指し直しができない」

という点も、やはり人生に例えられることが多いです。

もちろん、この「人生に例える」ってこと自体、
なんというか、前世紀感が強いですが、
でもやっぱり、
かすかな真実は含まれている気がしますね。

2021年8月6日金曜日

『Deadwind  刑事ソフィア・カルピ』<1>終了


フィンランドのヘルシンキを舞台にした

『Deadwind  刑事ソフィア・カルピ』

シリーズ1を見終わりました。

先日も書いたとおり、
物語の合間に挿入され、
もちろん舞台ともなっているヘルシンキの、
冷たく冴えた風景がなかなかよくて、
また、
ヒロインであるソフィも、
その若き相棒ヌルミも魅力があり、
おもしろく見ました。
物語は、アンナという女性の殺害事件をめぐって進められます。
彼女は、氷も浮かぶ海岸近くに、
白いカラーの花束を抱いて、
埋められていたのです。
そして捜査が進むと、
このアンナという女性が、
いくつもの円の中心点であり、
それらの円同士は微妙に重なり、
また不協和音も立てる、という感じになっています。
現代的な円も、
ゴシックな円も、
ありふれた情事の円もあります。

このドラマは比較的無口で、
その分ハードボイルドな感触があります。
(そこも嫌いじゃないです。)
若く優秀なヌルミには、
実は麻薬との付き合いという影が垣間見え、
夫を失ったばかりのソフィアの方は、
いわゆる個人生活上のさまざまな「苦労」があります。
ただソフィアは、それを「苦労」だと思わないようにしていて、
じっと黙って、仕事に集中します。

That'a the way to stay alive.

それについて、珍しく英語で会話しているとき、
彼女はこう言ったのでした。

そしてこのドラマには、
「ドイツ」が深く関わっています。
フィンランドが、こんなにドイツを意識しているとは、
全然知りませんでした。
あと、1度だけですが、麻薬がらみで、
エストニアの名前も出てきます。
(『クロワッサンで朝食を』は、
エストニア移民の話でしたね。)
そしてどうやらシリーズ2では、
エストニア人が事件に巻き込まれる模様です。
もう、見ないわけにはいかなくなってます!

2021年8月5日木曜日

Tokyo Shaking

東京で5.000人を越えた今日、
もしもこんなことが重なったらと思うと、
かなり恐怖……


津波に襲われる東京が、
フランス映画から出てきたわけですね、
日本映画からではなく。

それにしても、東京の街を歩くKarin Viard て、
やっぱり不思議な感じ。

すごく期待してる、ってほどではないけれど、
やっぱり見てみたいですね。

2021年8月4日水曜日

la Tour Eiffel

何でもないんですが、
やっぱりちょっとグッとくるのは、なぜ?

帰省

ヤフコメって、
ニュースによってはほんとにしょーもない時もあるんだけど、
プロ野球ネタのときはまあまあおもしろいと思っています。
で、
ついさっき見た、

東京都で新たに4166人の感染確認 過去最多 重症者は3人増の115人」

というニュースについていたコメントをコピペします。
なかなか秀逸!

*******************************

政府「頼むからお盆の帰省は止めて下さい」

国民1「中止の考えはない。強い警戒感を持って帰省に臨む」
国民2「バブル方式で帰省する。感染拡大の恐れはないと認識している」
国民3「帰省を中止することは一番簡単なこと、楽なことだ。帰省に挑戦するのが国民の役割だ」
国民4「安心安全な帰省に向けて全力で取り組む」
国民5「コロナに打ち勝った証として帰省する」
国民6「(帰省は)今更やめられないという結論になった」
国民7「『帰省するな』ではなく、『どうやったら帰省できるか』を皆さんで考えて、どうにかできるようにしてほしいと思います」
国民8「もしこの状況で帰省がなくなってしまったら、大げさに言ったら死ぬかもしれない。それくらい喪失感が大きい。それだけ命かけて帰省する為に僕だけじゃなく帰省を目指す国民はやってきている」
国民9「家族に感動を与えたい。帰省はコロナ禍収束の希望の光」

*******************************

座布団3枚!

「ケツをまくって逃げた」

自宅にいろ、
入院しようなんて思うな、
早い段階からの細かい治療はもうナシ、
すご~くひどくなったら、連絡して、
なかなかつながらないと思うけど!
って感じでしょうか?
♪オレはこの世で一番……
いやあ、植木等も真っ青!(←内容、文体、ともに昭和)

で、
お医者さんも、怒ってます。
ごもっともです。


今日、午後2時過ぎだったので、
もうすいてるかと思ってうどん屋を覗くと、
あらら、まだけっこう混んでる!
というわけでやめて、
テラス席のあるサブウェイで食べましたとさ。

2021年8月3日火曜日

ワクチン、値上げ

今日、フランスのニュースで知って確認すると、
日本でも報道されていました。
モデルナとファイザー、
ワクチンを値上げすると言ってます。



たしか春頃にも、
そんな話がありましたが、
やっぱりほんとに値上げするんですね。
全世界的な危機に対して、
これは裏切りに見えなくもないですが……
いや、そうじゃないんですね、
資本主義の論理は、
倫理なんか蹴っ飛ばすものなんでした。
それをはっきり思い出させてくれる「事件」ですね。
3回目も打つといいですよ、
とも彼らは言っています。
(まあ、これは実際そうなのかもしれませんが。)

日本での報道が小さい扱いなのは、
今はまだ「EU向けの」となっているからなんでしょう。
でも、うかうかできません。
オリンピックの数兆円に上る経費も払わなければならないし、
増税って話も出ないとも限りません。

それにしても、
仲良しのデザイナーが、
いまだにコロナ鬱から戻ってきません。
ずっと待ってるんですが……。
でもまた変異株が跋扈し、
感染者数はうなぎのぼりで、
いったい、出口は??

後期、そして来年度、
対面授業ができるのかどうか、
早くも気がかりな今日この頃です……

「丹羽くん」

「丹羽くん」がトレンド入り、だそうです。


4年前、つまり2017年の3月、
明治大学の卒業式に、
総合文化教室の主任として出席することがありました。
といっても、
わたしたちはただ、
式の間舞台横の椅子席に座って、
卒業を祝っている係なんですが。

今時の卒業式は、
活躍している卒業生からのヴィデオ・メッセージなどもあり、
昔風の、厳めしいだけのものではありません。
で、
式の終盤、
卒業生代表として登壇したのが「丹羽くん」でした。
彼は、学長から卒業証書を受け取ると、
二歩三歩、後ろにさがり、
そのまま階段を降りるのかと思いきや、
くるりと向きを変え、
武道館を埋め尽くした卒業生やその家族に向かって、
こう言ったのです。

「東京オリンピックでは、金メダルを取ります!」

武道館全体が大きくどよめいたのは、言うまでもありません。

あれから4年……
応援しています!

2021年8月2日月曜日

『Deadwind 刑事ソフィ・カルピ』


勝手に始めている<北欧ドラマ・シリーズ>、
今見ているのは、
フィンランドのヘルシンキを舞台にした

『Deadwind  刑事ソフィ・カルピ』

です。
ちょっとスピードが遅めなんですが、
やっぱり冬のヘルシンキの、
雪の残る森や、
寒々とした海辺など、
なかなか美しい映像で、
楽しみに見ています。

夫に死なれたばかりの女性刑事。
幼い娘と、夫の連れ子だったティーンエイジの娘を抱えながら、
「もう男なんかいらない」
といって捜査に没頭します。
それを見た上司の、
復帰が早すぎるんじゃないの?
なんていうイヤミを蹴散らしながら。

そこそこ長いドラマなので、
最初に起こった事件は、
どんどん深みに嵌まっていき、
事件がなければ見えなかったはずの、
さまざまな事柄が浮き上がってきます。
この辺、ドラマの醍醐味ですね。

ヒロインである女性刑事カルピが、
娘からは
「ちゃんと髪梳かしなよ」
なんて言われちゃうんですが、
その、ぜんぜん着飾らない感じも、
それなりに魅力があります。
気の合わないコンビの若い男性刑事とは、
いつか仲良くなりそうな気配がまったくないわけではないですが、
Mmm、どうなんでしょう。

授業も終わり、
これから大量のレポートを読まなくちゃですが、
ドラマで息抜きしつつ、
がんばりましょう!