2024年5月5日日曜日

『捜索者』

1955年と言いますから、
『ゴジラ』の翌年に公開された西部劇、

『捜索者』

を見てみました。
以前見た時は、評判ほどおもしろいとは思わなかったんですが。


この映画は、
公開当時の評価は芳しくなく、
その後どんどん評価が上がっていた作品として知られています。
ジョン・フォード監督の代表作は『駅馬車』だとわたしは思いますが、
いや、『捜索者』の方が上だ、という声もあります。

舞台は南北戦争の3年後、つまり明治維新の年です。
(映画のラストは、その6年後。)
見ていて何となく思い出したのは、
この映画には、感情移入できる人物が見当たらない、ということです。
主役のジョン・ウエインはアウトサイダーなんですが、
元南軍の兵士で、矛盾した人間に見えます。
つまり、兄夫婦のいる「暖かい家庭」に帰還するくせに、
そうした生活や価値観には馴染まない態度だし、
コマンチに連れ去られた姪を救出(=家族制度を守る)しようとするものの、
そしてその過程では、
牧師兼隊長である人物(=共同体の規範を象徴)の命令に従うものの、
5年後、やっと見つけた彼女が、
コマンチの酋長の妻の1人になっていることを知ると、
彼女を殺そうとするのです。
もう白人じゃない、と彼はいうのです。
矛盾は、ふつうは魅力的なものです。
ただ彼の場合、それは魅力には感じられません。

とはいえ、すごく好意的に見れば、
彼は変化したとも言えます。
その後意見を変えた彼は、姪を連れ帰ることに賛成します。
また、コマンチの血が入っているという理由で毛嫌いしていたワカモノを、
自分の遺産の相続人に指名します。
学習はしているのです。
ただ、白人共同体 vs.「インディアン」という善悪の構図の中で、
彼の位置は中途半端です。
共同体に入らないのに、人一倍「インディアン」の殺戮に燃えているのです。

もちろん映画ですから、
風景の美しさや、
戦いの場面の迫力なども要素としてあるわけですが、
好きな映画とは言えません。
でも、教材としてなら、抜群かもしれません。