3度映画化されていますが、
今回見たのは最後の、つまり1960年のヴァージョンです。
『足にさわった女』(1960) 増村保造監督
スリである京マチ子を、刑事であるハナ肇が追う、という物語です。
軽いコメディで、スピード感もあります。
と同時に、1960年という時代が、
とても濃厚に刻印されています。
ヒロインは、1960年時点で、25, 6歳、と言われているので、
1935年あたりの生まれということになります。
(となると、6歳の時に太平洋戦争が始まったと。)
そして彼女の父親は、まだ開戦前に、
スパイの嫌疑を親戚からかけられ、自殺しています。
ヒロインは、親と共に追い出された村に20年ぶりに戻り、
親戚たちに復讐することを考えていたんですが、
探して行ってみると、そこにもう村はありません。
米軍の、厚木基地なのです。
ヒロインはラスト、自ら逮捕してくれと言い出し、
実際刑事に逮捕されます。
「歴史」が代わりに復讐をしておいてくれたので、
ヒロインは、目標を失い、
管理される「公」の側に戻って来るかのようです。
ただこれは、あくまで「風俗映画」であり、
そんなに深い意味を求めるような作品ではないようです。