2012年9月12日水曜日

Les invités de mon père


『最強のふたり』の中で、
フィリップのアシスタント(?)として活躍していたイヴォンヌ。
彼女を演じた Anne Le Ny は、女優であり監督でもあります。
そして監督としての彼女の最新作が、
Les invités de mon père (『わたしの父の招待客たち』)です。

http://www.youtube.com/watch?v=lN1tyZS1qVc

引退した医者で、人道的活動を続けてきた「パパ」。
80歳になる彼が、ある移民女性を国外追放から逃れさせるため、
彼女と「白い結婚」をすると言い出します。
けれどもその女性、モルドヴァ出身の奔放な彼女に、
どうも「パパ」は本気で惚れているらしい……
という物語です。

「パパ」の子供たちは2 人。
弁護士の息子と、医者の娘。
それぞれ既婚の2 人は、最初は戸惑いながらも様子を見ますが、
「パパ」が遺産を放棄してくれと言ってきたり、
部屋の様子がどんどん変わっていくあたりから、
悩み始めます。

おもしろいと思ったのは、
「パパ」の行動をどう受け止めようか考える過程で、
特に娘のほうは、
「パパ」が自分に課してきた「教育」と、
モルドヴァ女性が身に着けているものが、
似ても似つかないことを発見するくだりです。
娘の悩みは、自分のアイデンティティーに移ってゆきます。
そして古いアイデンティティーを壊す第1歩として、
とりあえず同僚と浮気したりします。
この娘を演じるのカラン・ヴィアールは、
いわゆる等身大な感じで感情移入してしまいます。


また小さくて意味のあるエピソードとして、
モルドヴァ女性の小学生の娘と、
「パパ」の小学生の孫との、
淡い恋があります。
この恋が、エンディングに切ない影を落とします。

ただ結末は、ちょっと不満。
ブニュエルなら、「ブルジュア的」と言ったのではないでしょうか。