2018年7月30日月曜日

『トランシルヴァニア』

数日前、
トニー・ガトリフの Djam を見ましたが、
トニー続きということで、

『トランシルヴァニア』(2006)

を見てみました。
主演は、ファティ・アキン作品でお馴染みの、
ビロル・ユーネルです。
今回の彼も、
タナトスが強めの役で、
なかなか魅力的でした。

https://www.youtube.com/watch?v=OXDI_WOKLZA

ガトリフの映画らしく、
音楽はやっぱり重要なんですが、
お話そのものは、ちょっと逸れていくというか、
滑っていくものでした。
(もちろん、本当の主人公は、
こうしたもろもろのトポスとなるトランシルヴァニアだ、
とも言えます。)

イタリア人のジンガリーナは、
フランスから海外追放された恋人を探して、
ここ、ルーマニアのトランシルヴァニアにやってきます。
彼女は妊娠しているのです。
そして、あるお祭りの途中、
ミュージシャンである恋人を見つけるのですが、
彼はあまりに冷たく、もう終わりだ、と告げて立ち去ります。
どうしていいかわからなくなった彼女は、
一緒に来ていた友人からも逃げ出し、
当てもなく彷徨します。
そしてそんな時、
以前出会っていた、トルコ系のブローカーの男と再会し、
2人の、やさぐれた道中が始まります……

ビロル・ユーネルは、
やさぐれさせたら天下一品。
対抗できるのは……
『セリ・ノワール』などのパトリック・ドヴェール、
かな?

音楽は、ガトリフ監督らしく、
イケテます。
印象的だったのは、
やさぐれ男が村のミュージシャンたちを雇い、
雪原で飲んだくれて踊るシーン。
おじさん音楽家たちは、ふいに演奏をやめて、
こういうのです。

音楽は、生きるためのものだ。
苦しむためのものじゃない。

これは、監督自身の言葉でもあるのでしょう。