2019年1月8日火曜日

Look back in anger

『怒りを込めて振り返れ』
は、わたしは昔、David Bowie の歌で知ったのでした。

https://www.youtube.com/watch?v=BLW95vDgJbs ←ステキ

で、昨日、大学院のゼミで、
この芝居を映画化(1959)したものを見てみました。
ちょうどその時代の日本映画を研究している院生がいるからです。

https://www.youtube.com/watch?v=wKk5gzEhphY

見終わってから、
みんなで印象を話し合ったんですが、
さっきふと思いついて、
補足のメールを院生たちに出しました。

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昨日見た Look back in anger についてです。

シェークスピア学者だった中野里晧史によれば、
映画の原作になった芝居は、

男女の三角関係を扱った3幕のリアリズム演劇という
従来の型どおりの枠組みのなかで、
主人公のジミー・ポーターが
まったく新しい戦後世代のタイプの登場人物として
型破りで新鮮な魅力をもったのである。
三流大学を出て田舎町で屋台の菓子屋をやり、
イギリスの過去の栄光を羨望しまた非難し、
るべきまた倒すべき大義のない現代を呪い、
自分や妻を愛しまた憎み、
さまざまな矛盾に苦悩するジミーの饒舌は、
当時の鬱積した社会的感情のいわばはけ口であった」

とのことです。
ジミーは「三流大学」出身なのですね。
もちろんそれでも、昨日お話しした通り、
戦後イギリスの社会主義的政策のおかげで、
大学まで行けた面はあるのでしょうが。
(60年代のビートルズたちもまた、
社会主義的政策の恩恵を受けました。)

ざっくり言えば、
ジミーは既成の社会を拒否した、
ということなのでしょうが、
その既成の社会の根幹には、
植民地主義的ヒエラルキーがあると、
ジミー(たち)は感じていたのでしょう。
そういう既成社会はイヤだし、
また、そこに割り込んでいけない自分もイヤだというアンビヴァレンスを、
ジミーは生きていた、ということですね。

ただ、それは理解できるけれど、
もうひとつジミーの anger が、こちらに迫ってこない気がするのは、
日本も中国も、イギリスほどの植民地帝国だったことはないし、
日本は戦争に負け、
また中国は戦後に生まれたという、
国としての(イギリスとの)経験の差が大きい気がします。
でもまあ、十代の時見たら、もっと感情移入したでしょうけど。

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でも、魅力的な映画だったことは、
まちがいありません。

そして60年代については、公開中の

https://www.youtube.com/watch?v=22q2WWceZyE

に繋がるわけですね。