2024年2月18日日曜日

『ドン・キホーテ』

なんだか書いたような気がしていましたが、
書いてないことに気づきました。
今更ですが、
去年読んだ本の中で、
一番印象に残ったのは、

『ドン・キホーテ』

でした。
岩波文庫で全6巻。
前編3巻の刊行が 1605年で、
後編3巻の刊行が 1615年とされているようです。
とにかく、17世紀初頭の小説です。

わたしには、おそろしくおもしろかったです。
400年以上前に、
こんなに自由で、
さまざまなジャンルの要素が入っていて、
メタな部分もたくさんある小説が書かれていたなんて、
驚きでした。

ドン・キホーテは、
中世に流行った騎士道文学に入れ込み、
その荒唐無稽なフィクションをすべて現実だと思い込みました。
そして、
騎士道精神を「現代」に復活させるべく、
自ら「遍歴の騎士」となり、
冒険と栄誉を求めて、
まさに「遍歴」の旅に出るわけです。
彼の狂気は滑稽で、
周囲の人も呆れてしまい、
場合によっては彼を信じたふりをして揶揄うわけですが、
ドン・キホーテの狂気は揺るぎもせず、
その様子は、戦慄的でさえあります。
滑稽で旋律的。
これが『ドン・キホーテ』なのだと感じました。

なにしろ6巻もあるので、
読み始めるのにちょっと勇気が入りますが、
翻訳はとても明晰で読みやすく、
ぜんぜん辛くありませんでした。
ナチの迫害を避けてアメリカへ向かう船旅の際、
トーマス・マンもこの小説を読んだそうです。

とても素晴らしい小説でした。

(シェークスピアの『リヤ王』は、
初演が1606年だそうです。
1年違いですね。)