2014年3月30日日曜日

Dirty pretty things

かつて、『靴をなくした天使』(1992)という映画がありました。
ダスティン・ホフマンとジーナ・デイヴィスとアンディ・ガルシアという、
当時アメリカ映画を多く見ていたわたしには、
外せない一本でした。
(そのわりには、ハートウォーミングだったはず、という、
あいまいな記憶しかないのですが。)

この映画を撮ったスティーヴン・フリアーズが、
あのオドレイ・トトゥの『堕天使のパスポート』(2002)の監督であるのは、
なにか意外な気がします。
こちらの『堕天使』は、今日見て、
奇妙な印象を残す映画だと感じました。
原題は、Dirty pretty things です。

https://www.youtube.com/watch?v=ntALVSmIUrg

舞台はロンドンで、
トルコ系移民(難民)の女性と、
ナイジェリア系の不法移民男性が主人公です。
女性のほうは、母親みたいな人生はイヤ、というのが、
今ロンドンにいる理由で、
何れはNYの従妹のもとに行くつもりです。
男性は、実は医師で、無実の罪を逃れてロンドンにいます。
でも彼には、ラゴスに帰らなければならない理由があります。

移民たちの生活、その「現実」を、
わりと露骨に描いて、その生々しさが、
この映画の「味」になっていると思います。
一つの大きな設定としての臓器売買も、
その生々しさを高めています。
そしてそうした「現実」は、
たしかに現実的でもあるのでしょうが、
一方でメディア的好みの、フィクティブなものでもあります。
そして、
主人公二人の間には、
いわば「純愛」と呼べそうな感情さえ生まれるのですが、
この美しさと、
映画全編を覆う生々しさが、
なんとも釣り合わない、奇妙な印象を生むのです。

おもしろいのですが、
同時にちょっと引く、という映画でした。
(ただ原題を見ると、
意図的にそうしているとも受け取れますが。)