2013年1月1日火曜日

『欲望のあいまいな対象』

ルイス・ブニュエルという映画監督をご存知でしょうか?
いわゆるシュルレアリスム映画として名高い『アンダルシアの犬』から、
『昼顔』、『哀しみのトリスターナ』など、
よく知られた作品もありますが、
あまり知られていないたくさんの作品も残しています。

その中で、有名なほうの1本に、
『欲望のあいまいな対象』(1977)があります。

http://www.youtube.com/watch?v=3-6OUqQk-SM

これはブニュエルの遺作であり、
わたしも日本で公開されたときに、見に行った記憶があります。
そして、その訳のわからなさに魅了されました。
95年には、ほかのブニュエル作品と合わせて、論文も書きました。
(今考えると、「論文」らしくはないんですが。)

で、この映画を、昨日の大晦日に見たわけです、
紅白をやっているはずの時間帯に。
ずいぶん久しぶりに見たわけですが、
とても単純なことなのに、当時は分かっていなかった、というか、
そういう問題意識もなく、勢いそういう接近の仕方もしなかったのですが、
この映画、舞台の半分ほどはパリなのです。
そしてヒロインが母と住んでいるのは、
デファンス地区からほど近い、Courbevois です。
そうです、彼女らは「郊外」に住んでいるのです。
(一方娘にたぶらかされる金持ちの老紳士は、「パリ」に住んでいるようです。)
またヒロインは、物語の中盤で、故郷スペインへと強制帰国を命じられたりもします。
つまり、
この映画の若く美しいヒロインは、
スペイン系のサン・パピエの移民で、今は母とパリ郊外に住んでいる、
ということになります。
56 bis Rue de Louis Blanc, Courbevois, Hauts-de Seine
これが彼女の住所です。

この住所にある家は、映画内では、
お世辞にも豪奢とはいえません。が、
この場所を今ストリート・ヴューで見てみると、
なんとすっかり再開発されて、
「新しい街」そのものに生まれ変わっています。
まあね、デファンスのお隣ですから。

95年に論文を書いたときは、
そんなことはまったく気にならなかったのに、
パリに対する意識が変わると、
読み取るものも違ってくるわけですね。

『欲望のあいまいな対象』は、<移民映画>として見ることもできるわけです。