2018年8月29日水曜日

Papa Lumière

2015年制作の映画、

Papa Lumière

を見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=fP9OHMVE3H4

時は2011年4月、
コートジボワールは内戦状態にありました。
前年の暮の大統領選挙で、
新人候補が勝利したのですが、
それを不正だと主張する現職も勝利宣言し、
二人の大統領が並び立ってしまい、
それが、内戦に発展したのです。
そして、この混乱の真っただ中、
もう30年もコートジボワールの海岸でホテルを経営していたジャック
Niels Arestrup が演じます)が、
フランスに引き揚げてきます。
離れて暮らしていた娘、サフィ(14歳)と一緒に。
サフィは、ジャックが別れた妻と暮らしていたのでした。
(そしてその妻が高級娼婦であることを、
ジャックも、サフィも知っています。)

だからこの映画は、
いわば「引揚者もの」ということになります。
日本の戦後には、
多く扱われた題材なのでしょう。
ただフランスでは、
アルジェリア独立戦争後も、
こうした「引揚者もの」はほとんど作られませんでした。
フランス人たちは、それを見たくなかったのでしょう。
なので今回の映画も、
その点ではかなり少数派に属していると言えそうです。

主な舞台は、引揚者収容センターのあるニース。
で、映画自体は、とっても静か。
ほとんど何も起こらないと言ってもいいくらい。
アビジャンの情報は、
ときおりテレビニュースが映し出されたりしますが、
それもわずか。

でもわたしは、
なかなか佳作なんじゃないかと思いました。
見えない人を見えるようにしたわけだし、
ジャックとサフィも好感が持てます。

批判的なメディアの中には、
中盤以降、父と子の和解の物語にすり替わってしまった、
と指摘するものもありました。
そうも言えるでしょうが、
この混乱が、
そういう形をとったのだとも言えるでしょう。
父と娘は、もうアビジャンには戻らないわけですから。

1つおもしろかったエピソード。
劇中、サフィが初潮を経験します。
その時、おなじ収容センターにいた女性が、
サフィの頬を軽くたたくのです、パチンと。
何かと思ったら、
それはフランスの(一部の、のようです)習慣で、
あなたは女になり、
これから色々大変なことが始まるから、
その準備のための行為なのだ、というのです。
なんだか、切ないですね。
これは、映画が終わった後の、
サフィの運命を暗示しているのでしょう。