2018年8月20日月曜日

リールから ブエノスアイレスへ

そして呼び止められたのは、
50歳くらいの白人男性です。
パリに住んでる? ヴァカンス?
みたいな話から、
「ヴァカンスに行かないんですか?」
「実はぼくは、北フランスのリール出身なんだけど、
実家にいる母の具合が悪くてね。
しょっちゅう見舞いに行くし、ヴァカンスは無理なんだ」
ただし彼は来年、アルゼンチンのブエノスアイレスに転勤なんだそう。
「銀行勤めなんだけど、大量にあっちに行かされることになってね」
でそこからパリの話になって、
「ぼくは62歳で定年の予定なんだけど、
そうしたら、もうパリにはいないよ。
こんなに疲れて、うるさくて、ゴミゴミしてるとこなんか」
「でも、この界隈は好きなんですよね?」
「今はもう好きじゃない。パリを、フランスを、離れたいんだ。
だってフランスは、EUの中で1番税金が高いんだよ?
アルゼンチンなんか、
移民すれば、最初の10年は無税だっていうし!」

ここで彼はまた、マダムに呼ばれ、
わたしは二人と握手して別れました。
ブダペスト、
リール、
ブエノスアイレス、
トーキョー……