2011年2月16日水曜日

『愛と憎しみの新宿』


フーガのように(ってほどイイもんじゃないですが)やってきていたゲラ、
なんとかかんとか、

昨日=『フラ語ボキャブラ』
今日=『テレビ・フランス語講座・4 月号』

無事責了となりました。
それぞれの担当であるカンケさんとサホコさんが、
夜も寝ずに(まあ少しは寝て)がんばってくれたおかげです。
ありがとうございました!

テレビのテキストは3月18日発売、
『ボキャブラ』もほぼ同じ頃だと思います。
春ですね~

          ◆

「新書ブーム」と言われて久しいですが、
たしかにわたしたちが学生だったころに比べると、
はるかに身近になった気がします。
最近ここでご紹介したのは、菊池先生の『警察の誕生』と、
池澤夏樹編の『本は、これから』でした。
そして今日紹介したいのはというと、
『愛と憎しみの新宿 半径一キロの日本近代史』(ちくま新書)
です。

著者の平井玄氏は、1952年新宿生まれ。
そしてその後もずっと、新宿の内側から街を体験しています。
家業が2丁目近くの洗濯屋さんだったそうで、
その集配などを通しても、
たとえば店に集まる客たちとは異質の経験を積み上げています。

もちろん、60年代の「不良」としても大活躍。
近くて遠い世界が生々しく描写され、引き込まれます。
(わたしには、文体がやや高く、波長が合うまでに20~30ページかかりましたが、
その後はリズムよく読めました。)

で……

近くて遠い、と書きました。
それは二重の意味があります。

まず年齢的に言って、平井氏はわたしの6 歳上です。
つい先日も、同僚たちとのランチ中にそんな話になったんですが、
たとえば5 歳の差は、10代だったら、
決定的に経験の質を変えてしまうでしょう。
ビートルズにしろ、湾岸戦争にしろ、エジプト革命にしろ。
そういう意味で、この本に登場する店や出来事は、
近くて遠いのでした。

また場所もあります。
平井氏は、完全に、新宿をその内部から、えぐるように見ています。
それに対してわたしは、いつもある距離の向こうから眺めていました。
新宿には、なんともいえない感情が湧きますが、
そこには距離の感覚が常にあります。
単純に、わたしが東京の郊外(というか田舎)育ちであるせいでしょう。
『東京詩』にも書きましたが、
松任谷由実の歌は、
彼女が育った八王子と都心までの距離こそが、可能にしたものです。
それは内部から見た姿とはまったく違います。
近くて遠い、第二の理由です。

わたしが通った大学は四ツ谷にあって、
四ツ谷~新宿は、中央線で1駅、5 分でした。
でも学生時代は貧乏だったので、
よく四ツ谷から新宿まで歩きました。
まあ、30分くらいでした、繁華街までは。
裏門から出れば、赤坂は15分ほどでしたが、
こちらはめったに行きませんでした。

なんだか急に、新宿に行きたくなってきました。