2013年6月17日月曜日

『パリ郊外』


この写真、ご覧になったことがあるでしょうか。
1949年に出た、ドアノーとサンドラールの共作本、
『パリ郊外』
のカバーです。

エッフェル塔。
そしてHLM。
この両者が、当時こんな風に見えたのかといえば、
答えは NON です。
というか、今だってこんな風景、ありませんね。
この写真は、合成写真なのだそうです。

なぜわざわざ、こんな誰にもわかる合成をしたのか、
それはここに、メッセージが込められているからでしょう。
これは、「パリ」と「郊外」を、1つの画面におさめる試みなのです。
2人は、すでに数多く撮影されてきた「パリ」と拮抗するためにこそ、
『パリ郊外」という写真集を作ったのでしょう。
その意図が、ここにはっきり読み取れるわけです。

でもこの組み合わせって、
『アイシャ』の冒頭にも現れるんです。
きっとほかにも、現れているのでしょう。
それらは、ドアノーたちの予見が、
現実化したものだとも言えるのでしょう。

ちなみにこの写真集、日本版があるのですが、
こちらのカバーはまったく別物。
配列も、オリジナルとは違っているようです。