都市計画を勉強してきた学生と話していた時のこと。
彼女は、
「都市計画とか、地理とかばかりでは、
その都市に暮らしている人の心理はわからない。
それは、映画なんかに現れるんじゃ……?」
と(いう内容のことを)言うのです。
これは実は、重要なポイントだと思っています。
わたしがすぐに思い出したのは、
ルイ・シュヴァリエが1958年に発表した、
『労働階級と危険な階級』(喜安朗他訳・みすず書房)
のことです。
この本は、副題にある通り、
19世紀前半のパリの社会史です。
ただ、ありきたりじゃないのは、
この58年という早い段階で、
(つまりトッドなどよりかなり早く)
人口動態に注目していたことです。
(ちなみに、19世紀前半には、
統計によって世界を知るのは、
「神への冒涜」だったそうです。
でもその後、「好奇心と情熱」が、そうしたタブーを無効にしました。)
そしてシュヴァリエがすごいのは、
ただ統計を導入しただけではなく、
その上で、
当時の人々が事実に対して示した意識や関心こそが大事だと、
はっきり言ったことです。
そうした意識わからなければ、
彼らにとって社会がどんな意味を持っていたのかはわからない、と。
そして、
「もっとも気のおけぬ、もっとも秘めやかな」意識が、
文学テキストの中に見出せるとしたのです。
(「意識」と訳しているのは、実は l'opinion 「世論」です。)
文学、もそうでしょう。
ただパリの場合、今は映画も負けてないなと、
(これは特に根拠もなく)
感じています。