2018年2月22日木曜日

『労働階級と危険な階級』

先日、
都市計画を勉強してきた学生と話していた時のこと。
彼女は、
「都市計画とか、地理とかばかりでは、
その都市に暮らしている人の心理はわからない。
それは、映画なんかに現れるんじゃ……?」
と(いう内容のことを)言うのです。

これは実は、重要なポイントだと思っています。
わたしがすぐに思い出したのは、
ルイ・シュヴァリエが1958年に発表した、

『労働階級と危険な階級』(喜安朗他訳・みすず書房)

のことです。
この本は、副題にある通り、
19世紀前半のパリの社会史です。
ただ、ありきたりじゃないのは、
この58年という早い段階で、
(つまりトッドなどよりかなり早く)
人口動態に注目していたことです。

(ちなみに、19世紀前半には、
統計によって世界を知るのは、
「神への冒涜」だったそうです。
でもその後、「好奇心と情熱」が、
そうしたタブーを無効にしました。)

そしてシュヴァリエがすごいのは、
ただ統計を導入しただけではなく、
その上で、
当時の人々が事実に対して示した意識や関心こそが大事だと、
はっきり言ったことです。
そうした意識わからなければ、
彼らにとって社会がどんな意味を持っていたのかはわからない、と。
そして、
「もっとも気のおけぬ、もっとも秘めやかな」意識が、
文学テキストの中に見出せるとしたのです。
(「意識」と訳しているのは、実は l'opinion 「世論」です。)

文学、もそうでしょう。
ただパリの場合、今は映画も負けてないなと、
(これは特に根拠もなく)
感じています。