2018年5月1日火曜日

Allison


さらに続きです。
アルザス出身のアリソンは19歳。
フィアンセとは、10か月後に結婚の予定です。
そして今回、4か月間の料理人修行のため、
初めてパリにやってくるのです。
目指す店は、シェフ・パスカル氏の名前から、Le Paris de Pascal。
(この店名、le pari de Pascal「パスカルの賭け」のもじりでしょう。)
そして住み込むのは、
186 rue Saint-Maur。(←Google Map で見つけました。)
レピュブリック広場の近くで、
同居人の可愛いミュージシャン、カンタンは、
目元に火傷らしい傷があるのですが、
それは、2015年のテロの時、
広場からほど近いカリヨンにいて負ったものです。
(アリソンが、カリヨンの前を歩くシーンがあります。
ただ、何の説明もないし、カリヨン(や隣のプチ・カンボッジュ)が、
アップになるわけでもありません。
フランス人なら誰でもわかるのでしょうか。
そうも思えませんが。
もう1点。アリソンがパリに到着してすぐ、
レピュブリック広場に来た時のこと。
マリアンヌ像をバックに自撮りするのですが、その時彼女は、
「ここにはもう décor
(テロの後、さまざまに書かれたメッセージのことでしょう)
はなくて、でもお店はたくさんあるの、バカげてる!」
と言うのです。)
テロ後のパリ、
それが1つのテーマとなる瞬間です。

ところでアリソンの姓は Rosen で、
ユダヤ人にも多い名前です。
でも、ユダヤ人のゲイの家に料理のバイトに行ったとき、
ユダヤ人て初めて見た!
と言ったりします。
(イスラムではないアラブ系のノラ同様、
先入観を否定しているのでしょう。)

上京してきたアリソンは、
良くも悪くも「田舎」的だと言えるのでしょう。
ただ基本的に「都会派」の作品なので、
アリソンが体現する「田舎」的なるものは、
概して否定的に描かれているようです。
とはいえ、アリソンの美質も、もちろん描かれています。

冒頭アリソンは、ほとんど戯画的なほど、
「お上りさん」として現れます。
服も、髪型も、雰囲気も。
そしてある晩、同居人たちの部屋での飲みに誘われ、
そこに参加した時のこと。
パリの若者たちが、FNを支持しているのは facho だと揶揄しているとき、
アリソンは言うのです、
「うちの家族はFN支持。
ファシストじゃないけど、移民のせいで、仕事がなくなってるし」
それを聞いたパリの若者たちは、
なんとまあ!
という表情。そして、その中にいた、
おそらくはアフリカ系とヨーロッパ系のハーフの若い女性は、
「じゃあ、わたしは仕事もっちゃいけないってこと!?」
とおどけてみせ、みんなが笑うのです。
アリソンはいじけて、部屋に戻ります。
残った若者たちは、
言いすぎだよ、という人もいれば、
言ってやんなきゃ、という人も。

その後アリソンは、
ジルの息子で遊び人のレオとキスしたり、
ディスコで知り合ったかっこいい男の子と(初めて!)寝たり、
(それをフィアンセに報告したり)
同僚の、レスビアンの女の子と寝たり、
髪を切ったり、ピアスをしたり、
ファッションを変えたり、します。
「都会に染まる」ということなんでしょう。
ただ決して、彼女の内面は荒んでいるわけではなくて、
眠っていた子供が目を覚ましたという感じ。
でも、やっぱり子供なので、
目を覚ましたのはいいけれど、結局、わがまま。
同居人たちからも、レズビアンの彼女からも、
別のアラブ系の同僚からも、そう指摘されます。
そして少しづつ、大人になってゆきます。

物語のラスト近く、
アリソンはアルザスに戻ります。
でもそれは、アラブ系のカレシと一緒にでした。
すっかり変わってしまった娘の姿、
そしてアラブ系のカレシを見た父親は、
2人を追い出してしまいます。
頑迷な田舎、ということなんでしょうが、
この辺の描き方は、ちょっと不公平かも。

このアリソン以外の女性たちは、
もう自立していますが、
アリソンだけは、この物語の中で、
少しずつ成長するのです。
Paris etc. は、アリソンの成長物語だということもできるでしょう。

ちなみに、わたしが1番好きだったのは、
アリソンの送別会でのこと。
かわいいミュージシャンのカンタンが、
Ma facho préférée !(僕のお気に入りのファシストさん!)
と笑いながら近づいてゆくと、
Je suis pas facho !(ファシストじゃないもん!)
と言いながらアリソンも近づき、
しっかりと抱き合う場面でした。