2018年5月1日火曜日

Paris etc. (備忘録)

トータルで6時間になるテレビ・ドラマ、

Paris etc.

楽しく見終わりました。
6時間の群像劇なので、
いくつもの物語が同時進行し、
それらは絡み合ったり、合わなかったり。
まだ見終わったばかりで、
全然整理されていないのですが、
備忘録として断片を。

主人公とも言えるマリアンヌ(と妹のマチルド)の両親を演じたのは、
ジャック・ブーデとミッシェル・モレッティ。
つまり、『戦争より愛のカンケイ』で、
主人公アルチュールの両親を演じた二人が、
そのままスライドしてきています。

5人のヒロイン中、
唯一のアラブ系であるノラ。
彼女と夫の関係は、
絶え間ない口喧嘩と深い愛に貫かれていましたが、
最後は、ここで終わりにしよう、ということに。
いわゆる「別れ」で終わるのはこのカップルだけです。
ただ、
アルザスから出てきた少女アリソンは、
いろいろあった挙句、
アラブ系のサミールと結ばれます。
この、もっとも " facho" (=ファシスト)に近かった少女と、
アラブ系の少年との恋の成就は、
ノラの結婚の破綻とパラレルな位置にあるのでしょう。
「フランス」と「(アラブ系)移民」の関係の、
2つの可能性。
(ただしノラのケースも、
決して憎み合ったりはしていません。
愛し合ってるのに、うまくいかないのです。)

マリアンヌの二人の息子はヨーロッパ系で、
一人娘はアフリカ系なので、
てっきり養子なのだと思っていましたが、
4時間ほどたったところで、
この娘の父親が登場。
どうやら彼はグアドループの人で、
若い時旅していたマリアンヌと知り合って……
ということなんですが、
年齢(マリアンヌ=45歳)から言って、
その後子供を持ち、引き取ったということなんでしょうか。
はっきりは語られないのですが、
そういうことになるでしょう。
(だから、「アフリカ系」ではなく、カリブ系でした。)

アフリカ系の人の姿が、
背景に映り込むよう努力しているのはわかります。
が、人格を持った存在として、
アフリカ系の人が登場することはありませんでした。
(もちろん、どこかに入れることはできたでしょう。
たとえば、マリアンヌが通う教習所の指導員。
彼女は彼と関係を持つのですが、
もし彼をアフリカ系の俳優が演じていたら……
でもこれはかえってまずかったかも。
というのも、この指導員は、
薄っぺらな人間として設定されているから。
たった一人出てくる大人の黒人が薄っぺらいというのは、
明らかに問題がありますね。)


ヒロインたちのうち3人は、知的な専門職に従事しています。

病院勤務医(マリアンヌ)
通訳・翻訳業(ノラ)
会社経営(ジル)

医師というのは、「ミドル・クラス」とは言えないのでしょうが、
ドラマの中のマリアンヌは、
いわゆる「上流」の雰囲気ではまったくありません。
住んでいるのも、13区だし。
またノラは、典型的な高学歴・低収入です。
でも彼女はこれから、彼女にふさわしい仕事を見つけるかもしれません。
ジルのことは、ちょっと情報が少なくて、
よくわかりませんが、
彼女がパリに持っているアパルトマンは、
愛人(=義父!)に買ってもらったものです。

そして残る二人は、

マッサージ師(マチルド)
調理人(アリソン)

なんですが、
マッサージ師をしているマチルドは、
不倫を解消した後、
アーティスト(インド人とフランス人の両親を持つ)と恋仲になり、
彼にもらったヒントから、ラスト近く、
法律の勉強する決心をします。
(初めて自分の意思で、何かを決めたのです。)
彼女もやがて、専門職に就くのでしょう。
アリソンの場合、むしろ彼女は「地方」を背負っているのであり、
職業的な階層は二次的です。
とはいえ、彼女の職場の同僚たち、
あるいは、colo(共同間借り人)たちは、
このドラマ全体の中では、
ある階層的世界をはっきり提示していて、重要です。
(そうした世界での「パリ」の描写も含めて。)

で、なぜ「階層」についてこだわるかと言えば、
それは、

Paris 

というテレビ・ドラマの場合と、比較したいからです。
こちらでは、意図的に、
さまざまな階層の人たちが登場していました。
それに比べると、Paris etc. のほうは、
やや専門職のほうに寄っている印象です。
(つづく)