2018年5月1日火曜日

Nora


備忘録の続きです。
今回は、ノラに関わることがら。

最初にハッとしたのは、
ヘジャブをつけた女性作家へのインタヴューの場面。
その作家とヨーロッパ系白人のインタヴュアーがいる会場に、
通訳としてノラが飛び込んできます。
(書店らしい会場の外では、
上半身裸の女性たちが、
反イスラムのシュプレキコールを上げています。)
ふつうに始まったインタヴューでしたが、
途中突然、
ノラが作家にアラビア語で食ってかかります。
白人男性は
「何て言ったんだい?」
「この人はね」とノラは言います、
「ヘジャブを被ってないわたしは、grosse pute だって!」
grosse pute=デブの売春婦、なんて言われれば、
そりゃノラも怒ります。
しかもこの作家は、唾さえ吐いてみせるのです。
で、ノラは白人男性に言います、
「あなたたちは、なぜいつもこの人たちに発言権を与えるの?」
「だってそれは、人民(peuple)に発言権を与えることだから」
「わたしが peuple なの! Je suis le PEUPLE !
あなたにとって、誰が peuple なの?」
そしてノラは、
こんな仕事やってられない!
と言い捨てて、帰ってゆきます。

ノラの祖父母は、テュニスから、
ノラの父親が89歳の頃、リヨンに来た。
リヨンの、Croix-Rousse
それは必ずしも移民街ではない。
ノラは4人兄弟。

ノラの母親は読み書きができなかった。だから、
子供たちには教育を受けさせたがった。
ノラは、bac +6 (修士課程)まで進み、論文も書いた。

あるホテルのバーでのこと。
ノラとマリアンヌはすでに酔っぱらっていて、
そこにウェイターが、
つまみを運んできて、ノラに言います、
「こちらには、豚肉が入っております」
そしてウェイターが去ると、
ノラはマリアンヌに、真顔で言います、
「どうしてわたしがヴェジタリアンだと思ったのかな?」
もちろんこれは、
ノラがイスラム教徒だと思われたということですね。
それに対しノラが、
あえて気づかないふりをしたと。
アラブ系でもイスラムでない人も、
もちろんいるわけですね。

こうしたエピソードに共通しているのは、
ナショナル・アイデンティティーの問題です。
13区のアジア街に住む、アラブ系フランス人。
それは一つの新しい「像」なのでしょう。