2011年8月8日月曜日

そりゃそうだ


パリ13区事情に関連して、
なにか本が読みたいと思って、
ためしにアマゾンで「パリ」「周恩来」と入れてみると……
そのものズバリ、『パリの周恩来』(小倉和夫)という本が出ているのを発見。
さっそく読んでみました。

発行されたのは1992年で、
その後新資料が出たかどうかなど、
わたしはまったく知りませんが、
結論から言うと、とても勉強になりました。
そして1つ、なんだかミョーに腑に落ちたことがありました。

周は、1920頃にパリに渡ったのですが、
当時中国は、いわば赤ちゃんのような状態でした。
辛亥革命はあったものの、
北洋軍閥の勢力は強烈、
しかも日本をはじめとする植民地主義国が、
どやどやと自国に入り込んでいました、土足のままで。

自国を憂う若者たち。
周たちはパリにいて、
知識人ではなく外国人労働者として扱われながら、
中国の未来のヴィジョンを探りました。
そして彼らが選びとるのが共産主義だったわけですが……

その時彼らは、ヨーロッパ流の資本主義を選ぶこともできたわけです。
(実際そう考えた留学生たちもいたようです。)
でもそうしなかった理由は、『パリの周恩来』によれば、
まず第1に、
当時周たちが生きていたヨーロッパは、WWⅠ後の不況のただ中にあり、
とても若い中国が目指すべき状態には見えまなかったこと。
そして第2に、
今も自国を脅かしている植民地主義を、
自分たちもまねる気持ちになどなれなかったこと、
なのだそうです。

なるほど、そうでしょうとも。こんな状況で、
じゃあ俺たちはもっと強力な帝国主義だ!
なんて言うのはワカモノらしくありません。

ここで思いだされるのは、アフリカです。
1960年代に、イギリスやフランスから独立した国々は、
社会主義を掲げることが多かった。
それは心情的には、周たちの事情と近かったのでしょう。
さんざん自分たちを理由なく搾取していたアイツラと同じ路線なんか、
進めるわけないじゃん! と、
そりゃ思いますよね。

そしてまた、たとえば今のマグレブや中近東の国が、
もし「アメリカ=悪魔」だと思っているなら、
とてもじゃないけど、アメリカ的民主主義なんか、
取り入れる気になれないでしょう。
その民主主義には、強欲資本主義ももれなく付いてくるのですから。

そしてこの「アメリカ=悪魔」という考えは、
それほど極端でもないようです。
アメリカ軍がしてきたこと、
アメリカに援助されたイスラエルがしてきたこと、
アメリカ的資本主義が、たとえばアフリカでしてきたこと。
彼らの立場から見た場合、
それらをまとめて、「悪魔的」所業だと言っても、
そんなに不自然な感じはしません。

そして彼らには宗教があるのだから、
共産(ないし社会)主義による国家ではなく、
イスラム国家の建設に向かう、ということになるのは、
むしろ当然のような気もします。

日本、アメリカ、あるいはヨーロッパのどこかにいて、
「世界の一員になりたきゃ、とりあえず民主主義からな!」
と嘯くのは簡単ですが、
(そしてそれが決定的に間違っているとも言えませんが)
それだけでは足りないのでしょうね。