今夜
夜の吐息に暖められ
その異形の輪郭を研ぎ澄ませてゆくころ
光なき空に放たれた声は
ほどけた網のように
ふわりと 未聞の道を探りはじめた
雨と雪と風が巡り
やがて足音は遠ざかり
ものうい潮汐が忍び寄ってきた けれど
砂丘に横たわる焦げた幹の
脇腹を抉っている赤い洞穴
その見開いた震える鏡には
終わりのない波頭が今も激し
濡れた溶岩の呼び交わす声は深海から地上へと
言葉なき巡礼の隊列を組む
ぼくたちの足首が青く染まる
無数の瞳が空を埋め尽くす
懐かしい声が帰ってくる