さて、昨日は、
ディジタル・コンテンツ系の修士論文発表会でした。
全部で8人。
それぞれに力のこもった論文でした。
中で、わたしがほんの少しだけ審査の手伝いをしたのは、2本。
ヴィデオ作家、というか、
最近は映画監督としても知られるミッシェル・ゴンドリーを中心に、
ミュージックヴィデオの歴史的分析を行った論文が1つ。
そして、ハワイのフラの中でも特異な位置を占める、
メレ・マイという舞踊を通して、
ハワイアンの身体観、ひいては世界観に迫ろうとした論文が1つです。
前者は、まさにディジタルなコンテンツに対して、
新しい批評性を打ち立てようという美しい野心に貫かれた、
若々しいものでした。
ミュージック・ヴィデオは、映画との共有物をたくさん抱え込んでいますが、
一方で、それならではの初期条件、
つまり、ある楽曲に奉仕するという使命を帯びているわけです。
ただ、出来上がった作品は、時にその使命を越え、
それ自体が評価される地平に達したわけですが。
そしてゴンドリーは、まさにそのトップを走っていたわけなんでしょう。
(わたしが好きなのは、パリで撮影されたコレ;
https://www.youtube.com/watch?v=6Fe1Scu5fdw
だんだん増えます!)
彼の、ある意味でローテクな作品と、
あのメリエスの作品の比較なんかも、
今後、おもしろいかもしれません。
後者は、舞踏という、論文の対象になりにくいものに対して、
果敢に、そして深い愛をもって取り組んだものでした。
フラというと、一般にそのハンド・モーションが注目されがちですが、
このメレ・マイの場合、
むしろ下肢の動きに大きな特徴があるそうです。
というのは、それが生命の、創造の、
つまり根源的なエロスにかかわる特別な踊りだからです。
今回の論文は、この舞踊の具体的な動きを丁寧に追いながら、
その背後の意味に、じっと目を凝らすものでした。
たとえば「ココナッツ」のような生の象徴が、
ハワイの創世神話の中で、
どのような役割を演じたことがあるのか、
さらには、
「オスなるもの」「メスなるもの」はどうか、
なども知りたくなりました。
これだけの論文を書くのは大変だったと思います。
お疲れ様でした。
(そして、さらなる精進を!)