2020年5月27日水曜日

「ペパーミント・キャンディー」

2000年に公開された韓国映画、

『ペパーミント・キャンディー』

を見てみたんですが、
これはもっと早く見ておくべき映画でした。
見ていて息苦しいけれど、
よくできたいい映画だと感じました。
(とわたしが言うまでもなく、
大きな賞も獲っています。)

https://www.youtube.com/watch?v=so0Y2mFFock

まず構成が独特で、
まず「現在」のシークエンスが冒頭にあり、
その後6つの、
それぞれタイトルを持ったエピソードが語られるのですが、
それらは、時間を遡る形で連なっていくのです。
「現在」が1999。
6つのエピソードは、

1999(「現在」の3日前)
1994
1987
1984
1980
1979

そう、1987と1980が、
つまり民主化運動と光州事件が入っているのがわかります。

主人公はキム・ヨンホ。
(『監視者たち』、『殺人者の記憶法』のソル・ギョング)
1979に20歳、99に40歳。
つまりこの映画は、
このキムの後半生を描きながら、
韓国の現代史を語るという体裁をとるわけです。
「市井の人」である彼は、
一方で時代に翻弄されるわけですが、
もう一方では、人間としての弱さ、みっともなさ、狡さ、
みたいなものにも塗れています。
そこが、この映画の息苦しさであり、
もっとも評価できる点なのでしょう。

でも「評価」というなら、
韓国映画史における位置も重要です。
これは四方田犬彦氏の指摘ですが、
韓国映画が、韓国現代史の「闇」を描くのは、
まさにこの映画から、だそうです。
つまり、
わたしが授業で使おうとしている『1987』や『タクシー運転手』などは、
その子どもたちに当たるわけですね。
まさに、エポック・メイキングな映画、ということになるでしょう。

そして個人的には、
この主人公、たぶんわたしと1歳ちがいです。
1979といえば、わたしは大学2年でしたが、
そのころ彼(ら)は、仕事仲間とピクニックしていたのです。
そしてその翌年、
彼は兵役にとられ、
何も知らないうちに、
光州事件の真っただ中に放り込まれ、
大学生たちを追いつめろと命じられるわけです。
そうか、それが1980、
つまりわたしは大学3年、
わたしは彼だったかもしれないし、
彼に追い詰められていたのかもしれないわけです……

これは1994のエピソードの中でのこと、
主人公と、その若い愛人がクルマに乗っていて、
カセットを取り出した女性のほうが、
それを勝手になにげなく再生するシークエンスがあります。
そこで流れだしたのは、
Blackmore's Rainbow の Catch the Rainbow でした。

https://www.youtube.com/watch?v=UvVKj0c0UTQ

これは忘れもしない、Deep Purple 解散後の1975年、
リーチー・ブラックモアが結成したバンドの、
デビュー盤に入っていた曲です。
チョー久しぶりに聞きました。なつかしい……
この曲を聞いた時、
主人公と同じ時代を生きたことが、
グッと迫ってきたのでした。