2020年10月9日金曜日

神楽坂

今週の『東京詩』は、

「物理学校裏」(北原白秋)
「狂者の詩」(高村光太郎)
「九段坂」(与謝野晶子)

これらに加えて、
斎藤茂吉と吉井勇の短歌を取り上げます。
場所的には、

神楽坂
お茶の水
九段
柳橋

などです。
暁星やアンスティテュ、
クレープのル・ブルターニュ、
柳橋の小松屋などにも触れる予定です。

なかでもメインは神楽坂。
わたしも特によく知っているわけではないんですが、
知り合いのデザイナーがアトリエを
(友たちと共同で)借りていたり、
仲良しだった編集者と何度となく行ったそば屋などがあります。

そのそば屋とは、蕎楽亭。
この店は以前、市ヶ谷の近くにあって、
その頃から行ってました。
で、神楽坂に移転したわけですが、
とても印象深いのは、
ある年の暮れに行った時のこと。
編集者と飲んでいると、
きれいな着物を着た女性たちが4,5人入ってきたのですが、
彼女らはどうやら、
近所の芸者さんたちで、
年末の御挨拶に来たようでした。
その時、店内がパ~~ッと明るくなったのは、
言うまでもないですね。
料亭などには縁のない衆生にとっては、
その時の光景が、「神楽坂」のイメージの基底になっています。

で、
この蕎楽亭のあるのは、
「見番横丁」の近くです。
でまた、芸者小道もあり、
それをうねうね辿っていくと、
白秋が明治の終わりに住んでいた家があった場所に出ます。
ここには旧居跡、という掲示があるんですが、
その場所はまさに、物理学校(=理科大)裏、なのです。

白秋の詩の「官能性」も、
それなりに面白いと思うのですが、
わたしとしては、
この詩が着目した土地の(文化的)多層性のほうに、
気が行ってしまうのでした。