2009年1月11日日曜日

ありふれた奇跡


東京は、けっこう寒い日でした。陽は出てたんですけどね。それにしても、だいぶ日が伸びた気がします。このまま夏至に向けて、だんだん伸びてゆくんですね。

たとえば、今担当している5時間目は、16:20~17:50 なんですが、前期だと、終わってもまだまだ明るいんです。ところが12月には…… とうぜん真っ暗に。そんなに関係ないけど、でもやっぱり、明るいほうがいいかな。

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さっきやっと、先日録画しておいた山田太一のドラマ「ありふれた奇跡」を見ました。どんな話かというと……

中年の男が、ホームの先端に立っている、それを見かけた若い女性が、そしてもう一人、若い男性が、何かを感じて中年男を見つめる…… 突然、彼は電車に飛び込もうとする、抱きつき、体を預け、飛び込みを阻止しようとする若い二人…… でも、駅長室に呼ばれた警官の前で、中年男は言う、突然殴られた、死のうとなんてしてない! と。

でも…… やっぱりそれは嘘。彼は死のうとしていた。だから後日、老警官の特別の計らいで、一度だけ、名前も住所も訊かない約束で、中年男は二人に再会、礼を言う。男は、妻と娘を火事で亡くしていた。

「でも、四年も前のことなんですけどね」
「いや」と老警官。「本当の不幸は、心に届くまで時間がかかるんだよ」

そして中年男は若い二人に尋ねる、どうして私が死のうとしてるって分かった? もしやあなたたちも、死のうとしたことがあるんじゃ……?

第一話はここまで。テレビ・ドラマは、映画と違って、時間の流れが緩いもの。それは当然でしょう。でも今回の山田作品は、なかでも特にゆったり時間を流している印象でした。とにかく、まだまだ始まったばかり。追っかけてまいります!

山田作品の中では、やっぱりあの『岸辺のアルバム』や、『思い出作り』、『早春スケッチブック』、『ふぞろいの林檎たち』などが印象に残っています。そう、『高原へいらっしゃい』も好きだったかな。古い版も新しい版も。

こうして考えると、山田作品はけっこう見たなあと思います。(そりゃあね、ある時期からは、必ず見てましたから!)彼のドラマには、必ず幾つもの価値観がぶつかり合う箇所があります。それはまあ、ドラマ作りの基本と言えるかもしれません。ただ、その衝突と各個人の距離の取り方、それがどうも、それぞれの時代の感性に合っていたのかなあ、なんて考えたりもします。

「真面目ってなんだよ」(柴田恭平)
「平凡な生活を支えるってことがどれほど大変か、おまえは分からないんだ」(津川雅彦)

記憶の靄の中から、こんなセリフが思い出されます。そうだ、山田太一名セリフ集、なんてのを作れば、面白そうだなあ……