で、その「地上5センチの恋心」です。これはある種のラヴ・コメで、主人公は夫に先立たれた主婦、オデット。彼女はデパートの化粧品売り場勤務で、美容師の息子(19歳)がいます。息子はおおっぴらにカミングアウトしている可愛いゲイで、とても母親と仲良し。この二人の仲の良さは、なんだかとてもいい感じ。それからオデットには娘も一人いるのですが、こちらは歩く不機嫌。しかもややキモイ彼氏がいて…… こういう枠を背景にして、事件は起こります。
事件、それはオデットの恋なのですが、相手は彼女が熱愛している小説家本人。彼は奥さんと色々あって、オデットに接近することになります。
このオデットの反応が、平均的なフランスの女性の反応かといえば、それはよく分かりません。ちょっと古めかしいような気もします。ただ、そこは階級社会フランス。映画の中でも、「売り子や美容師にしか受けない小説」みたいな言い方がフツーにされているのですが、そのあたりのことも意識して見る必要があるのかもしれません。
で、映画の中のアクセントに使われているのが、意外にもジョセフィン・ベーカー(画像)の歌です。その歌に合わせて踊るオデットの様子は、たしかにジョセフィンを意識しています。
ジョセフィン・ベーカー? とにかくこれを!
つくづくYou Tube さまさまです。( wiki は各自!)ついでに、映画の中でも聞こえてきた「ハイチ」という歌。これは歌詞つきでどうぞ。
オデット一家の踊り、1番の見せ場は;
息子のルディがバナナを腰に付けていますけど、これも、まさにベーカーのスタイル(も1度上の画像をご覧ください!)ですね。
ところで、この「地上~」の監督・脚本は、実は先日(6月14日)ここでも取り上げた、「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」の脚本家でもある、エリック=エマニュエル・シュミットです。「イブラヒム」のほうでは、ユダヤやイスラムがテーマの一つになっていました。ということは…… 平均的(?)白人家庭でこんなにも愛されているのが、初の黒人スターとも言われるジョセフィン・ベーカーであることが、意味のない思い付きだったとも思えません。
小さなラブ・コメに奥行きを与えるのは、こんな演出なのでしょうか?