2010年8月2日月曜日

コロンブスの夢


今から518 年前の今日、8 月 2 日の夜の11 時、
クリストファー・コロンブスは、パロス港の

「桟橋に立って、
最後の水夫たちと他の探検隊員がデッキに上がって行くのを見ている。
夜11時きっかりに全員乗船していること、というのが彼の指令である。」

出帆するのは翌 3 日。なのになぜ、こんな異例な時刻に集合がかかったのか?

「スペイン王フェルディナンドとイサベラの勅令によれば、
この日(8 月 2 日)の真夜中以降、いかなるユダヤ人ももはやスペインの地に
留まってはならないのだ。」

「コロンブスは、(11時から)正確に 1 時間後にスペイン警察、市の民兵部隊、
異端審問の手の者が(ユダヤ人の)捜索に乗り出すのを知っている。」

それはつまり、コロンブスの船の乗組員は、大半がユダヤ人だったということ?
コロンブス自身がユダヤ人だというのは、何度か聞いた話だけれど。
コロンブスは、ユダヤ人が住むための土地を見つけたかった?
あるいは、伝説の「ユダヤの国」を発見したかった?

南米大陸には、その後たくさんのユダヤ人が入植し、
プランテーション経営に乗り出すものもあらわれた。
するとヨーロッパから追手が伸び、ユダヤ人たちはそれを逃れ、
今度は北米に、ニュー・アムステルダムを建設する。それは、
今のニューヨークのことだ。

ところで、ヨーロッパでは迫害されたユダヤ人たちだが、
彼らが南米に入植する時、彼らもまた、先住民を迫害した。
ヨーロッパの内と外で、レイシズムが生まれる……

         ◇

このごろ、よくテレビの語学番組を見ると言いましたが、
先日のスペイン語講座には、フェルディナンドとイサベラ、
2 人の王もちらっと登場しました。
番組内では、ネイティブの若い男性が、
古いお城にはスペインのワビ、サビがある、と、
なかなか興味深い発言。そういうものなんですかねえ?

当時のスペインのユダヤ人迫害のすさまじさは、
20世紀のナチを彷彿とさせるものがあります。
戦費調達のためもあり、裕福なユダヤ人を次々拷問にかけ、
火あぶり、あるいは八つ裂きにし、財産を没収する。
もちろんこの財産については、キリスト教会を奪い合いになったわけですが。
(現世の権力と宗教界が争うというのは、日本でもどこでも、
いくらでもあったことですね。)

レコンキスタが終わり、コロンブスが出港した1492年。
すごく大きな節目ですね。

*引用は『希望の帆 ― コロンブスの夢、ユダヤ人の夢』
                                                                (ヴィーゼンタール著)新曜社
*参考文献は『スペインのユダヤ人』(関哲行著)山川出版社

ジャック・アタリの『1492  西欧文明の世界支配』(ちくま学芸文庫)なんかも、
そのものズバリですね。
アタリもまた、コロンブスはユダヤ人だと「考えたい」と書いています。(P.183)

*画像は「コロンブス」ですが、実はどの肖像画も、
ほとんど「想像上の」ものでしかないそうです。