2015年3月21日土曜日

Une Séparation(『別離』)

日本でも、
ちょうど3年くらい前に公開された映画、
『別離』
を見てみました。

(もうずい分前、
日本版DVDが出ていなくて、
フランス語版だけが出ている期間にそれを買って、
なぜか長~く「つんどく」にしていたのを、
やっと見たのでした。)

http://www.betsuri.com/cast/

まず、これはテヘランが舞台で、
登場人物は全員イスラムの人です。
(先日見たサウジの様子とは、だいぶ違いますが。)
2つの家族があって、
どちらも夫婦と子供がいます。

ただ一方では、夫の父親がアルツハイマーであり、
娘の人生のためにイランを出るかどうかで、
夫婦は鋭く対立しています。
ミドルクラスの、娘の人生を第一に考えたい妻と、
病気の父親を置いていけない夫。
ヴィザはあと4か月切れてしまうので、
出発するならそれまでにしなければなりません。

もう一方では、夫が失業中で、借金を抱えています。
けっして楽な暮らしではありません。
しかも妻は妊娠中です。

この映画、引き込まれるんですが、
見ているのがつらい。
おもしろくないという意味じゃなく、
なんというか、明らかな悪意は存在しないのに、
登場人物全員が苦しんでいる。
それは、
人間というものがもともと苦を背負わされているからであり、
また、イラン社会が、そして世界が、
そうした苦を生む装置となっているからでもあります。
そう、これはたしかにイランの特殊事情もあるでしょうが、
その程度の特殊さなら、
どの社会にもあるものでしょう。
つまり、イランだから、ということではありません。

まじめな、いい映画だと思いますが、
同時に、なかなか技巧的で、
観客を引っ張ってゆく術にたけていると感じました。
この脚本家(=監督です)なら、
小説も書けるでしょう。
たった1つ問題なのは、
見ていて、胃が痛くなったことです。