2016年10月30日日曜日

Rendez-vous à Atlit

ジェラルディン・ナカシュのことは、
もちろん彼女が女優として活動していることは知ってるし、
そこそこ追いかけてもいるんですが、
どうしても、
大好きな Tout ce qui brille の監督、
というイメージで見てしまいます。
そのあとの Nous York は、素晴らしいとまではいかなかったけれど。

今日見た

 Rendez-vous à Atlit (『アトリットで会いましょう』)  2015

は、イスラエルのアトリットが舞台で、
彼女はユダヤ系3姉妹の末妹の役です。
結論から言うなら、
彼女、役者として一皮抜けた印象です。
これまでの作品に比べると、
存在感、というんでしょうか、感じました。

https://www.youtube.com/watch?v=c61kwJ22r30

祖母が、1910年にシベリアから徒歩で(!)やってきて、
イタリア系の男性と暮らし始めた、
このアトリットの家。
彼らの娘は、この家で3人の娘を生みますが、
やがてフランスに移住。
(中東戦争のゆえなのでしょう。)
で、それまで住んでいた家は、
その後は、年に一度里帰りするだけの家となっていました。
そして娘たちの両親が亡くなり、
アトリットにある古い家をどうするか、
3人の娘たちが集まったわけです。
若いジェラルディン演じるカリは、
パリにアパルトマンを買って、生活の基盤を得たい。
でも長女は、この家を売るのが忍びない。
そんな駆け引きの中、
なんと、両親が彼女たちの前に現れるのです。
ただしそれは、彼女らそれぞれにしか見えず、
二人以上が同時に見ることはないのです。
そう、映画ですから、完全にそこにいるのですが、
これは幻想なのです。
そしてやがて、娘たちの意見は変わってゆきます……。

この「幻想」の感じが、とても不思議な味わいで、
この映画の最大の特徴でしょう。
ただもう1点、とても重要なのは、
時代が、1995年の秋に設定されているということです。
オスロ合意の2年後のこの年の11月4日に、
ラビン首相は暗殺され、
せっかく手繰り寄せた和平への契機が、
またするりと逃げてしまうのです。
こうした、イスラエルに暮らすことの安全さの問題が、
家を売る売らないにも、影響してきます。
家の売値にも影響するでしょう。
つまりこの映画は、
単なる家族映画ではなく、
イスラエルという土地の問題と深くかかわった作品なのです。

監督のShirel Amitay は、
イスラエルの女性ですが、
フランスで育ったようです。
日本で公開されることはないでしょうが、
なかなかいい映画だと思いまいした。