タハール・ラヒム、
アデル・エグザルコプロス主演の映画、
『アナーキスト』(Les anarchistes 2015)
を見てみました。
https://www.youtube.com/watch?v=efwyVIwXENc
舞台は、1899年のパリ。
(パリ・コミュ―ンから約30年、
バンド・ノワールから約15年、ということですね。)
孤児院で育った貧しい青年ジャンは、
警察にスカウトされ、
アナーキストを監視するスパイとなります。
ジャンにとってこれは、
ひとつの「出世」であり、社会への参加であり、
思想的な事件ではなかったといえるでしょう。
彼は順調に(?)スパイの仕事をこなしますが、
社会正義を説き、真摯な彼らと接するうち、
彼も次第に、アナーキスムに共感を抱くようになってゆきます。
しかも、アナーキストのグループにいたジュディットに魅かれるようになり、
その傾向は強まるように見えます。
ただ、そうした中で、
アナーキストたちの行為は過激化し、
それは社会変革への意思というより、
ルサンチマンの発散に近づいてゆきます。
ジャンは、違和感を感じ始めます……
地味ですが、
いい映画だと思いました。
まず、今、この19世紀末を舞台にした映画を撮ることの必然性が、
始まってすぐに伝わってきます。
それは、ジャンたちが働く工場の描写です。
耳をつんざく騒音の中、
彼らは早朝から夕方まで働きづめで、
巨大な搾取の対象なのです。
「自分を虐げる者たちのために働く」ことを、
彼らは余儀なくされており、
産業革命以来の機械化が、
彼らの生活をより過酷なものにしているようにも見えるのです。
つまり、今、と似ているわけです。
ただ監督は、アナーキスムを美化してはいません。
その美質や可能性は認めつつも、
アナーキストという人間の限界も見つめています。
(だから今も、極論すれば、
イデオロギーはさておき(!)、
人間として信用できる人に政治をやってほしいと思うわけです。)
主演の二人、よかったです。
アナーキスト仲間を演じるギヨーム・グイは、
この頃よく顔を見る俳優で、
今回が一番よかったかな?
やさしそうな風貌と違う役どころだったのが、よかったのかも。
もう一人、スワン・アルノーのよかった。
というわけで、なかなかよかったです!