2018年9月20日木曜日

『長江哀歌』

ジャ・ジャンクー監督の 2006年の作品、

『長江哀歌』

を見てみました。
漢字なので、
ついこれがオリジナル・タイトルなのかと思ってしまいますが、
そうではありませんでした。
原題は、『三峡好人』。
三峡ダムで知られる地域、
特に、完全に水没する町、奉節を舞台にしています。


山西省の違法な炭鉱で働いている労働者、サンミンは、
16年間会っていない妻と娘に会いに、
奉節にやってきます。
彼は妻を、当時の3000元で「買った」のでした。
奉節は「女が多く、売られる女も多い」のです。
ただし彼は、妻にやさしく接しました。
それでもなぜか、
子供を産んだ後、
妻は故郷・奉節へと帰ってしまったのです。
しかしサンミンが来てみると、
かつての妻の実家は、
すでに水没していました。
ここから、彼の本当の妻探しが始まります。

そしてもう一人、
やはり山西省で看護師をしていた女性、シェン・ホン(チャオ・タオ)もいます。
彼女は、
もう2年間、
時折かかってくる夫からの電話を待って暮らしていたのですが、
夫に話さなければならないことができたのです。
夫は、どうやら、
水没する家に暮らす人たちを、
違法に追い出す仕事を仕切っているようなのですが……

この2つのストーリーは、
いくつかの章によって構成されています。それは、
煙草、酒、茶、飴、
などと題されていて、
つまりそこでは、
庶民の生活が焦点化されていることが宣言されているようです。

静かな、堂々として映画でした。
ただ、住民100万人以上を移住させたこの三峡ダムの建設と、
その周辺でもがくように生きる人々の暮らしの関係、
るいは、
そのことと、
サンミンやシェン・ホンの「旅」との関係、
さらには、
山西省から、奉節を経て上海へ向かうというシェン・ホンの移動の意味など、
今はまだうまく言うことができません。
もう少し、
考えてみる必要がありそうです。
もちろん、いい映画ではありました。