『アテナ』(2022)
を見てみました。
わりとよかったです。
あれる郊外、アテナ。
そこに、アラブ系の兄弟がいます。
父親違いの長男モクタールは麻薬ディーラー。
次兄アブデルは軍人。
三男カリムはワカモノたちのリーダー。
四男イディールは13歳。
そして順番は分からないのですが、
ひとり女性もいます。
彼らには、同じ地区の団地に住む母親もいますが、
父親の影はありません。
(長男と次男が、「父親」の二面を象っているようです。)
で、
ある動画がSNSで拡散するのですが、
それは、四男のイディールが、
警官たちに殺される場面を捕らえていました。
カリムはアテナのワカモノを組織し、
大がかりな暴動を引き起こします。
弟を殺し逃走した警官を逮捕せよ、と言うのです。
(当然です。)
ただアブデルは軍人ですから、
「フランス」の側に立ち、
カリムを説得しようと試みます。
けれどもカリムは聞く耳を持ちません。
兄に向かって、おまえなんか Harki に過ぎない!
と言い放つのです。
アラブ人の兄弟なのです。
(字幕では「裏切り者」となっています。)
ただ……
やがて、このアブデルを豹変させる出来事が起こり……
ストーリーをうまく複層的にしているのは、
イディールを殺したのが、
実は警官ではなく、
警官を装った極右かもしれない、という情報です。
これによって極右は、
「フランス」の分断を狙ったかもしれないのです。
そしてこの映画の特徴は、
長回しが多く使われていることでしょう。
映像的にもおもしろいし、
ドキュメンタリー的な雰囲気も出るし、
おもしろいです。
ただこのおもしろさが、
映画の物語と完全にフィットしているかというと、
それはビミョーなんですが。
監督のロマン・ガヴラスは、
コスタ=ガヴラスの息子です。
ということは、ジュリー・ガヴラスの兄弟ですね。
ジュリーが撮ったのはこれでした;
そしてロマンは、
音楽ヴィデオなんかも多数手がけています。
たとえば、
やっぱりこんな感じなんですね。
そして脚本には、この監督と、
ラジ・リも参加しています。
まあこの作品、誰が見ても、
『レ・ミゼラブル』と雰囲気が似ています。
いろんなドラマや映画を見て、
今またこうした映画を見ると、
「フランス」だなあ、と感じます。
(もちろん、実際はフランスだけじゃないんですが。)