2022年10月8日土曜日

『アテナ』

ネトフリに配信されたフランス映画、

『アテナ』(2022)

を見てみました。
わりとよかったです。


あれる郊外、アテナ。
そこに、アラブ系の兄弟がいます。
父親違いの長男モクタールは麻薬ディーラー。
次兄アブデルは軍人。
三男カリムはワカモノたちのリーダー。
四男イディールは13歳。
そして順番は分からないのですが、
ひとり女性もいます。
彼らには、同じ地区の団地に住む母親もいますが、
父親の影はありません。
(長男と次男が、「父親」の二面を象っているようです。)
で、
ある動画がSNSで拡散するのですが、
それは、四男のイディールが、
警官たちに殺される場面を捕らえていました。
カリムはアテナのワカモノを組織し、
大がかりな暴動を引き起こします。
弟を殺し逃走した警官を逮捕せよ、と言うのです。
(当然です。)
ただアブデルは軍人ですから、
「フランス」の側に立ち、
カリムを説得しようと試みます。
けれどもカリムは聞く耳を持ちません。
兄に向かって、おまえなんか Harki に過ぎない!
と言い放つのです。
アラブ人の兄弟なのです。
(字幕では「裏切り者」となっています。)
ただ……
やがて、このアブデルを豹変させる出来事が起こり……

ストーリーをうまく複層的にしているのは、
イディールを殺したのが、
実は警官ではなく、
警官を装った極右かもしれない、という情報です。
これによって極右は、
「フランス」の分断を狙ったかもしれないのです。

そしてこの映画の特徴は、
長回しが多く使われていることでしょう。
映像的にもおもしろいし、
ドキュメンタリー的な雰囲気も出るし、
おもしろいです。
ただこのおもしろさが、
映画の物語と完全にフィットしているかというと、
それはビミョーなんですが。

監督のロマン・ガヴラスは、
コスタ=ガヴラスの息子です。
ということは、ジュリー・ガヴラスの兄弟ですね。
ジュリーが撮ったのはこれでした;


そしてロマンは、
音楽ヴィデオなんかも多数手がけています。
たとえば、



やっぱりこんな感じなんですね。

そして脚本には、この監督と、
ラジ・リも参加しています。
まあこの作品、誰が見ても、
『レ・ミゼラブル』と雰囲気が似ています。

いろんなドラマや映画を見て、
今またこうした映画を見ると、
「フランス」だなあ、と感じます。
(もちろん、実際はフランスだけじゃないんですが。)