8エピソードで完結の
『シッカー・ザン・ウォーター』
見終わりました。
前半の1~5話までは、
まあ「75点」といった感じでしたが、
6~8 話は「90点」と言えると思いました。
つまり後半、やっと物語が動き始めると同時に、
緊張感もスピード感もアップします。
舞台は、パリのTV局、
そしてそこでキャスターを務めるファラの家族がいる、パリ郊外です。
物語の中心にいるのは、あるマグレブ系の家族。
第一世代である母親。
信仰心に篤く、子どもたちが生きがいです。
第二世代である兄弟たち。
長女のスイラはいつもイスラムのスカーフを被り、
モスクにも足繁く通っています。
彼女の娘が、17歳にあるリナ。
リナには新しくカレシができるのですが、
スイラは夜遊びする娘を厳しく管理し、
リナはそれに激しく反発します。
(いつもスカーフ被ってる、ママみたいな人生なんかイヤ!)
そして次女のヤスミナ。
市役所で15年働いていますが、
夫はゲーム三昧で、妻を振り向かず、
二人の息子たちはともに「肥満児」です。
ヤスミナは、結婚して増えたのは借金だけ、だと言います。
三女は、この家族で唯一の大卒で、
TVキャスターとして華やかに働くファラ。
彼女は未婚です。
最後に末の弟、セリーム。
麻薬業界の末端にいて、大きなミスをしでかし、
それが、結果として、
この家族全員にとっての悪夢となっていくのです。
このドラマでは、「父親」の不在が際立っています。
ファラたち兄弟も、
麻薬組織の地元のリーダーも、
父親がいません。
特に末弟のセリームは、
(家父長的世界の「男」ですから)
家族が食べていくために、
母親が売春婦になるよりは、
自分が麻薬ディーラーになるほうがマシだ、
という理由でその世界に入っていったのです。
また組織のメンバーの一人も、父親が母親を殺し、
12歳だった自分はそれから強盗になった、と言っていました。
(父親は子どもたちを捨てたのでしょう。)
物語上、「父親」や「男」にも、
かすかな希望は残されていますが、
あくまで「かすか」です。
それに引き換え女性たちは、みな懸命なのです。
このドラマには、
批判もあるようです。
たとえば、マグレブ系の男は全員ダメってこと? とか、
アラブ系もアフリカ系もステレオタイプばかり、とか。
ただ、フランスでの映画評を読んでいると、
この「人物がステレオタイプだ」というのが、
まさに批判のステレオタイプです。
もちろんそういうこともあるでしょうが、
気に入らないときはとりあえずそれ言っとけ、みたいな感じもあります。
ナウェル・マダニはそれに反論しています。
いろんな女性たちが輝いている作品を撮りたかった……。
そのココロは、
さまざまな女性たちを登場させることを、
ステレオタイプと言われても、ということなんでしょう。
そうそう、タイトルと『憎しみ』の関係についても、
こんなインタヴューがありました。
"Le titre a failli être "Ca va bien se passer". Le personnage d’Oumar le dit d’ailleurs plusieurs fois dans la série. Pratiquement tous les jours sur le plateau, mon mari me disait "Chaque jour suffit sa peine. Écoute moi, jusqu’ici tout va bien.". Il me disait ça à chaque fois que j’étais stressée. J’aime bien cette phrase. Elle peut être menaçante et surtout, on s’attend au pire quand on entend ça parce que tu sais qu’après c’est la merde. Donc, c’est lui qui a trouvé. Mais oui c’est un petit clin d'œil à La Haine, parce que ça a bercé notre jeunesse. On est fier de rendre hommage à ce film culte."
なかなかいい話ですね。