2023年4月23日日曜日

『UNSEEN ~名もなき存在』

南アフリカを舞台にしたドラマ、

『UNSEEN ~名もなき存在』(2023)

を見てみました。


「清掃係」をしている女性、ゼンジ。
彼女の夫は服役中で、
その間に息子も射殺されています。
悲しみの中で生きる彼女の元へ、
ついに夫が釈放されて戻ってくる、はずでしたが、
夫はそのまま行方をくらまし、
マフィアもまた、彼を探し始めます。
ボスの罪を被って服役していた彼は、
組織が、彼の家族を守るという約束を守らなかったことを恨んでいるからです。
そしてゼンジは、夫を捜し回るうち、
意図せず殺人を重ねることになります。
けれども、彼女はなかなか捕まりません。
黒人清掃係であるゼンジは、
多くの人にとってunseen、つまり「見えない存在」だからです……

南アフリカの作品と言えば、
わたしにとってはまず『ツォツィ』です。
で、この映画でもそうだったように、
今回のドラマでも、
南アの言語状況はきわめて複雑なので、
「意味」は字幕で分かっても、
誰がどの言語を話しているのか分からないのが、
とてももどかしいです。

そしてまさにその『ツォツィ』に出ていた俳優が、
少なくとも二人、
このドラマにも出ていて、懐かしかったです。
作家役を演じたMothusi Magano と、
マフィアのボス役のRapulana Seiphemo です。
前者は、かつての勉強ができる不良(ボストン)で、
後者は成功したビジネスマンでした。
演技にも配役にも、
共通性を感じました。

先日見たばかりの『トリとロキタ』も、
「見えない存在」を描いていたと言えるでしょう。
わたしたちの「ふつう」の生活からは見えない彼ら……。
ただ、2作の「見えない」感じは、まったく同じではありません。
目の前にいるのに見えないゼンジと、
そもそも(麻薬を買う人以外には)ほんとに見えないトリとロキタ。
そして『トリとロキタ』では、
彼らがその社会的背景とともに描かれていたわけですが、
Unseen のほうは、その「見えない」という点をエンタメに展開し、
物語を作っているわけです。

そう言えば『サンバ』もまた、
見えない労働者を描いていましたね。