2023年4月22日土曜日

『トリとロキタ』

ダルデンヌ監督の新作を見てきました。


舞台は、ダルデンヌ監督ではお馴染みのリエージュ。
そこで暮らす少年トリはベナン出身。
そしてトリと大の仲良しのロキタはカメルーン出身で、
彼女には滞在許可証がありません。
で、許可証を持つトリの姉だと偽って申請するのですが、
これは……
でロキタは、アフリカで待つ母親と兄弟たちに送金するため、
麻薬の運び屋をやったり、時には性的な虐待を受けたり。
しかもその後、偽造パスポートと引き換えに命じられた仕事は、
それまでとは違う恐ろしさがあり……

ダルデンヌ監督らしい、と言っていいのか、
ドキュメンタリー的であり、
でも決定的にドキュメンタリーではない映画です。
カメラは対象を「追う」ので、
観客は終始、
その場に立ち会っている緊張感の中で画面と向き合います。

これは「見えない存在」の物語です。
わたしたちにはもちろん、
リエージュに住んでいる「ふつう」の人たちにさえ、
「見えない」物語だと言えます。
まっさきに思い出すのは、『サンバ』です。
あの映画も、
「ふつう」にパリに暮らしているだけでは、
決して会わない人たちを描いていました。
サンバは、「見えない」労働者なのです。

小さめの映画館でしたが、
お客さん、そこそこ入ってました。
まだまだ上映中です!