『森と湖のまつり』
をDVDで、院生と見てみました。
原作は武田泰淳です。
舞台は北海道。
語り手は東京からやって来た画家、雪子。
彼女は、アイヌ問題の研究者である教授に連れられてここまで来ましたが、
教授が大学に戻った後も、
実際には、最後まで、物語と併走します。
で、
その物語の主人公は一太郎(高倉健)。
彼は、アイヌの「純血」を掲げ、
差別を受けているアイヌ民族の再興を(やや暴力的に)目指しています。
そこに関わるのが、事業者である大岩。
彼ら一家は、アイヌという出自を隠し、
「しゃも」(非アイヌ)として成功しています。
一太郎は、それが気に入らない。
出自を明かし、アイヌの人たちを雇え、というのです……
テーマは、
民族的アイデンティティーと「血」の関係、
自然の中での狩猟採集生活と、産業社会の相克、
Cultural Appropriation文化的簒奪、などで、
それらが複数の視点から描かれていて、「現代的」です。
また、映像的には、
明らかに西部劇の影響、
特に『シェーン』(1953)の雰囲気が色濃く感じられ、
不思議な感じでした。
またラストに近い決闘シーンは、
まつりの場面とのクロス・カッティングで描かれており、
約15年後の、『ゴッドファーザー』的な緊張感がありました。
有名な作品とはまったく言えないと思いますが、
こんな映画もあるんだなあと、感心しました。