2023年4月29日土曜日

『森と湖のまつり』

内田吐夢監督の、1958年の作品、

『森と湖のまつり』

をDVDで、院生と見てみました。
原作は武田泰淳です。


舞台は北海道。
語り手は東京からやって来た画家、雪子。
彼女は、アイヌ問題の研究者である教授に連れられてここまで来ましたが、
教授が大学に戻った後も、
実際には、最後まで、物語と併走します。
で、
その物語の主人公は一太郎(高倉健)。
彼は、アイヌの「純血」を掲げ、
差別を受けているアイヌ民族の再興を(やや暴力的に)目指しています。
そこに関わるのが、事業者である大岩。
彼ら一家は、アイヌという出自を隠し、
「しゃも」(非アイヌ)として成功しています。
一太郎は、それが気に入らない。
出自を明かし、アイヌの人たちを雇え、というのです……

テーマは、
民族的アイデンティティーと「血」の関係、
自然の中での狩猟採集生活と、産業社会の相克、
Cultural Appropriation文化的簒奪、などで、
それらが複数の視点から描かれていて、「現代的」です。
また、映像的には、
明らかに西部劇の影響、
特に『シェーン』(1953)の雰囲気が色濃く感じられ、
不思議な感じでした。
またラストに近い決闘シーンは、
まつりの場面とのクロス・カッティングで描かれており、
約15年後の、『ゴッドファーザー』的な緊張感がありました。

有名な作品とはまったく言えないと思いますが、
こんな映画もあるんだなあと、感心しました。