今年のベストの1つ、
と先日書いた『ザ・ディプロマット』ですが、
その、とてもいいと思ったシーンで、
日本語字幕が誤訳? と思われる箇所がありました。
エピソード8の、22分あたりです。
備忘のために書いておきます。
イギリスの外務大臣デニソン(男性)と、
駐英アメリカ大使ケイトが、
フランスの女性外務大臣に面会する場面。
まずデニソンが提案を説明し、フランス外務大臣に拒否されます。
続いて、今度はケイトが話し始めるのですが、
そこでデニソンが再び話に割り込み、
(マンタラプティング!)
またもや拒絶され、この会見は一旦終わります。
が、
二人はめげず、今晩もう一度説得しようと話し合います。
で、ケイトはデニソンが一人で行くことを想定するのですが、
デニソンは、
いや、行くのは君だ、と答えます。なぜなら……
I interrupted you.
And then gave you a chiding shake of the head.
Makes women furious.
She clocked it too.
You never have to mention it,
but you'll have an unspoken bond
build around your shared irritation.
With me.
この部分、字幕は、
邪魔者は私
君をたしなめて 神経を逆なでした
彼女も気づいていた
私と いら立ちを共有することで
不思議な連帯感が生まれる
となっています。
まず、論理的に意味をなしていない気がします。
「私と」誰が、「いら立ちを共有する」のか、
誰と誰の間に、「連帯感」生まれるのか?
よくわかりません。
ここでの誤訳のポイントは、最後の With you. です。
ここは、女性の話を遮って話した男性に対して、
女性二人がいら立ち、その結果、無言の内に、
(女性同士の)連帯感が生まれた、
ということなんでしょう。
つまり、With me. の with は、
その前の irritation から続いていて、
「私に対するいら立ち」
のことだと思われます。
それを通して、女性の連帯感が生まれたわけです。
デニソンは、女性の話しを途中で遮るという、
自分の男性中心主義的な失敗を踏まえて話しています。
なので、
With me.
と彼が言うとき、
彼の声は、とても複雑に響くのです。
この部分は
(彼女の前で、私がやらかしたことに触れる必要はまったくないが、)
あなたたち女性二人の間には
不思議な連帯感が生まれている
いら立ちを共有することでーー
私に対する
くらいなんじゃないでしょうか?