2011年4月28日木曜日
DES HOMMES ET DES DIEUX
この3 月に日本でも公開されていた『神々と男たち』、
見逃していたので、DVD(フランス版)を見てみました。
まずは予告編。ここで見られます;
http://www.ofgods-and-men.jp/
長くはない予告編なのに、最初の 1 / 3 が聖歌だなんて、
なかなか思いきった編集だと思います。
でもたしかに、映画全編を支配しているのはあの雰囲気です。
この映画は、実話に基づいており、
この事件を知っていれば、結末はあらかじめ分かっているわけです;
http://fr.wikipedia.org/wiki/Assassinat_des_moines_de_Tibhirine
1996年、アルジェリアの貧しい山間部の修道院、
そこで自給自足に近い生活を送る、8 人の修道士たち。
彼らのほとんどは、老年期に差しかかっています。
そして医師でもあるフレール・リュックは、
老齢をおして、近隣の病人の診療に明け暮れています。
そんな修道院と村人に襲いかかったのは、
イスラム過激派、Jamaa Islamiste です。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jamaa_Islamiya_(Liban)
もちろんアルジェリアはイスラム国ですが、
極端に原理主義的なイスラミストたちは、
たとえば、15歳の女子生徒達に向かって、
あなたたちもそろそろ恋する年頃ね、
と言った女性教員を、殺しさえします。
修道士たちは、当然身の危険を感じ、
それでも村にとどまるべきか、それともフランスに帰国するか、
あるいはアフリカのもっと安全な修道院に移るか、
選択を迫られます。
現地の知事は、彼らに出発するよう強く要請します。そして、言います;
Je suis triste et fatigué de ne pas nous voir devenir adultes.
Et moi, je dis que c'est la colonisation française,
ce cambriolage organisé, qui nous a retardés.
「アルジェリア人は、なかなか成熟してくれない。
この悲しい現実を目にするのは、もうあきあきなんだがな。
だが言っとくぞ、おれたちがこんなに後れちまったのはな、
フランスに植民地にされたせいさ、
あの組織だった強盗のせいなんだよ」
フランスによる植民地化がなければ、
あの場所に修道院が存在することもなかったでしょう。
たしかに院は、村人の医療に貢献しています。これは大きい。
でも知事の言葉に、修道士たちは言葉がありません。
(もちろんここでは、知事の側にも、
自分たちの権力を維持する意図があったのも事実でしょうが。)
ただこの映画は、そうしたことを告発しようとするものではありません。
ポイントは、ムスリムに貢献し、ムスリムに頼られる修道士たちの見せる、
聖職への献身、ということになるのでしょう。
この映画は、フランスで大ヒットしたそうです。
静謐な、淀みの少ない、抑制された映画だと思います。
でも、たとえばアルジェリア系のメディが見たら、同じ感想ではないかもしれません。
ちなみに、タイトルの「男たち」というのは、
修道士たち、イスラミストたち、アルジェリアの軍隊、ないし政府関係者たち、
ということになるでしょう。
そして「神々」。
これを複数形にしたということ自体、
1つのメッセージになってしまうようです。
キリスト教の「神」と、イスラムの「神」はちがうというのが、
監督の立場なわけですね。