2015年9月5日土曜日

L'ATTENTAT そしてkamikaze


2012年に発表された、
フランス=ベルギー=カタール=エジプト映画、

L'ATTENTAT (テロ)

は、緊迫感のある、「衝撃の」ストーリーでした。
(原作は2005年の同名小説)

予告:https://www.youtube.com/watch?v=LsR2Ni2yqtA

全篇:https://www.youtube.com/watch?v=PHyiQYwCTco

イスラエルは、もちろんユダヤ人国家として知られているわけですが、
実際には、その20%ほどはアラブ系(パレスチナ人)です。
ただ彼らは、さまざまな社会的・制度的制約を受け、
なかなか社会進出を果たすことができません。
それでも中には、少数ながら、
イスラエル社会に同化し、
社会的ポジションを獲得する人もいます。

この映画の主人公アミンもそんな一人で、
彼は有名外科医として、
妻とともに、
テル・アヴィヴで暮らしています。

ある日、勤務先の病院近くでテロが起きます。
次々と運ばれてくる犠牲者たち。
そこには、多くの子供たちが含まれています。
命を落とす者たちもいます。

その後帰宅したアミンですが、
そこには、すでに帰宅しているはずの妻の姿がありません。
そして夜中、
アミンは病院から緊急の呼び出しを受けます。
行ってみると、なんとも奇妙な雰囲気です。
刑事が現れ、彼に言うのです、
死亡した女性が奥さんであるかどうか、
確認して欲しいと。
それは、たしかにアミンの妻でした。
しかも、彼女の下半身は失われ、
首は黒焦げです。
刑事は言います、
自爆テロを起こした人に特徴的な損傷です、
奥さんは、自爆テロ犯です……

アミンは信じられません。
15年の結婚生活の中で、
妻のそんなそぶりは、一度も感じた事さえなかったからです。
そもそも妻は、キリスト教徒なのです。

テロリストの仲間であることを疑われたアミンは、
警察にとらえられ、厳しい尋問を受けます。
それでもアミンは、それが妻の犯行だとは、
どうしても信じられません。

やがて、釈放。
アミンは、事件前の妻の行動を調べ始めます。
そして、わかってしまうのです、
テロ犯は、やはり彼の妻だったのです……

その後彼は、
妻にこれをさせた組織との接触を求め、
パレスチナ自治区のナーブルスに入ります。
観客たちは、テル・アヴィヴとは違う、
パレスチナ内部の雰囲気を味わうことになります。
もちろん、テロは許容できません。
けれど、ナーブルスのアラブ人たちが示す論理にも、
一定の理路はあるのです。
映画は、民主的で抑圧的なイスラエルと、
テロへ傾斜する弱者であるパレスチナ組織の思想を、
対比的に示します。
そこに、アミン夫婦の個人的な愛を絡めて見せるわけです。

最後にひとつ。
日本のメディアでは「自爆テロ」と呼ばれるものが、
フランス語圏や英語圏のメディアで、
しばしば kamikaze と呼ばれていることを、
ご存知でしょうか?
日本ではよく、イスラム的「自爆テロ」が理解できない、
と言われますが、
それは kamikaze なんです。