ソルヴェイク・アンスパック監督の、
別の作品を見てみました。
『陽のあたる場所から』(2003)
です。
(原題は、Stormy Weather。
英語題ですが、基本はフランス語です。)
https://www.youtube.com/watch?v=qCOrQBTqIEI
精神科の研修医であるコラは、
ある何もしゃべらない患者を担当しています。
ところがある日、
その患者はアイスランドへ送還されてしまいます。
インターポールの行方不明者のリストに、
彼女が載っていたのです。
それを知ったコラは、
あと数か月で治るのに!
という思いだけで、
アイスランドへ向かいます。
そこで、担当医に話をするつもりなのです。
が、着いてみると、
その女性ロアが、夫や子供と暮らす小さな島には、
町医者が一人いるだけで、
精神科医そのものがいないのです。
しかも、ロアは、
どうやらコラを覚えてさえいないようです。
失意に沈むコラ。
けれども、ある事件をきっかけに、
コラはロアを連れてフランスに戻る決意をします……
あまり明るい話ではなく、
それほど起伏があるわけでもなく、
物語はわりと淡々と進むのですが、
見終わってみると、
やはり前回見た L'Effet aquatique との、
明かな構造の類似を感じないわけにはいきません。
『水の効果』の場合は、
アラブ系の男性がヨーロッパ系の女性を追ってアイスランドへ、
という展開でしたが、今回は、
フランス人女性がアイスランドの女性を追ってアイスランドへ、
という形になっていて、
要は、AがBを追ってアイスランドへ向かう物語なのです。
『陽のあたる場所から』の場合、
唐突ですが、
このコラとロアは、
共に監督の分身であり、
アイデンティティーとか出自とか、
そういったものが隠れたテーマなのだろうと感じられました。
実は、ラストシーンに近く、
ロアがコラの手を取るシーンがあります。
ああ、監督の中で、
何かが和解したのだろうな、と思える場面でした。
そう考えてくると、
『水の効果』のほうも、
単純なロード・ムーヴィー的恋愛ものではなく、
たとえば同じアイデンティティーでも、
フランスのナショナル・アイデンティティーに関わるのだろうか、
などとも考えてしまいます。
これは自信ありませんが。
コラを演じたのは、エロディ・ブシェーズで、
彼女はこの映画の、印象的なヒロインでした。
http://tomo-524.blogspot.com/2013/09/louisetake-2.html
今回も彼女がきれいなので、
それが映画全体の印象をよくしていると感じました。
まあ、当たり前ですが。
今回は日本版のDVDで見たのですが、
こんなひねった作品の日本版が出ているのは、
よろこばしいことだと思いました。