2022年9月21日水曜日

『プレデター ザ・プレイ』

今日の大学院ゼミでは、
ゴダールを追悼して何か見ようと思ってたんですが、
みんなでだべっている内、
なぜか!

『プレデター ザ・プレイ』

を見ることになりました。
Disney+ で配信されています。
(劇場公開はありません。)


この作品は、
「プレデター」シリーズの5本目にあたっていて、
院生によれば、
シリーズ最高傑作? という感じらしいです。
時代は1719年、場所はグレート・プレーンズ。
そこに、コマンチ族の集落があり、
また、その土地のバッファローを狙うフランス人ハンターたちがいます。
そしてある日、
空から、プレデターがやって来ます。
この三者が、互いに「狩る」ことになってゆきます。
ただし、「狩る」ことの意味は、
それぞれにとって違いがあります。

<以下、ネタバレ含みます>

主人公は、コマンチ族の若い女性、ナル。
彼女は当初、「狩る」ことを通して、
自分が真の戦士であることを証明しようとします。
それは、彼女の母親などに割り振られた、
薬草を扱ったり皮をなめしたりといったこと、
つまり「ケア」全般とは別のことです。
(ただ、男たちが彼女を最初に狩りに連れて行くのは、
彼女が「ケア」できたからなんですが。)
そして、ライオンなどを狩ろうとしている内、
彼女はプレデターの存在を感じ始めます。
この宇宙からきたモンスターは、
つまりはマッチョの権化であり、
相手を倒すことで自己の存在理由を獲得しようとします。
この点は、ナルの兄を含めたコマンチの男たちにも、
通じる部分があります。
当初は、ナルもまた、こうした考えに則って行動していました。
が、ナルは母親に言われるのです、
真の戦士とは、生き延びる者、なんだと。
ここから、ナルにとっての「狩り」の意味は変化していきます。
プレデターと対面したときも、
むやみに戦わず、
生き延びることを最優先させてゆきます。
そしてついに対決の時がきて、ナルはプレデターを倒します。
ナルは、「ケア」もでき、生き延びることも達成したわけです。
プレデターは、自分自身のマチズモに倒されます。
マチズモは自爆するのです。

フランス人たちはフランス語を話しています。
彼らは、この時点ですでに入植しているヨーロッパ人ですが、
映画が一応終わった後投映される壁画風のイラストには、
今後も、空から、
巨大な船団のようなものがこの土地に飛来することを予告しています。
これこそ、「ヨーロッパ」なのでしょう。
「フランス人」たちが、
現場でのヨーロッパ人盗賊であったのに対し、
プレデターは、「ヨーロッパ」の、
あるいは国家的植民地主義の先兵だったとも言えそうです。

ホラーなのに、
と言ったら失礼かもしれませんが、
こんな構造を備えているんですね。