2009年9月20日日曜日

スリリング!


理系本4冊目は、またまた福岡伸一、『プリオン説はほんとうか?』です。この本、「タンパク質病原体説をめぐるミステリー」と副題がついているのですが、まさにその通り、質のいいミステリーを読んでいるときの興奮に似たものを強く感じます。

狂牛病が話題になったのは数年前ですが、この問題はまだまだ終わってはいないようです。つい数日前にも、全頭検査の是非をめぐっての長文が、朝日新聞に掲載されていました。

わたしは知らなかったのですが…… 人間の細胞は、1ミリの1/30くらい。で、それを「人間の拳」くらいに置き換えたとすると、いわゆる細菌(コレラ菌とか)は「米粒」くらい、そしてウイルスは鉛筆で書いた「点」くらいなのだそうです。

ところが、伝達性スポンジ性脳症(羊ならスクレイピー病、牛なら狂牛病、ヒトならヤコブ病)の場合、その病原菌はウイルスよりもはるかに小さい、そう、遺伝情報を乗せる核酸を持てないほど小さい、ということが分かったのでした。でも待てよ、その病原菌、増殖するんじゃ? そのためにはDNAがいるんじゃ?

しかもこの病気に対して、生物は免疫反応を示さない、ということは…… 病原菌というより、それは生体内由来のもの? がん細胞みたいに?

で、登場したのが、異常型プリオンタンパク質犯人説。生体内にもともとあった正常型プリオンタンパク質が、この異常型と接触することで、ドミノ倒しのように次々に異常型に変わり、それが脳にたまる、そして神経細胞を死滅させる。なるほどそれだと、上記の条件に合っているようにみえます。そしてこの説を提唱したプルシナーは、ノーベル賞を受賞します。でも……

福岡ハカセは、この「プリオン説」を丹念に検証します。そのプロセスはまさにスリリング。導き出された結論も、は~、なるほどね~、と、素人なりに深いため息を誘われます。いや、なかなかすごい本です。

というわけで、完全に福岡ハカセにハマッテしまいました! もっと読んじゃお!

(この『プリオン説はほんとうか?』は、とてもおもしろいのですが、ベストセラーになった新書に比べると、だいぶ固いです。もしも福岡本を試すなら、2冊目以降にしたほうがいいかもしれません。)