今日は、「辻征夫を偲ぶ会」があるそうです。辻の「花」の詩。部分的にですが読んで、ここから偲ぶことにしましょう。
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わたしは沈丁花が
咲いているのをみつける
あの数秒の
時間が好きです。
わたしはうつむいて
今日いちにちはどんな風になるのだろう
きのうのわたしのらんぼうな 言葉は
きのうのちいさな雲のように
もうあのひとの
ぼんやりとした
こころの空からきえたかしら
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もう1つ。
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ぼくは窓の手摺にあごをのせ
あの夾竹桃をまばたきしないで何分間
みつめていられるかなんてそんなこと
毎日はやらなかったが十回はやっただろうか
さびしいときにはそうするんだと
先生がおしえてくれたのだ
先生というのは死んだぼくの友だちで
ぼくはかれとは十年前に酒場で
喧嘩してわかれた
ぼくはいつまでも先生のことを思うと
あのうしろ姿はあのままだれにも
呼びかえされぬままに日々に遠ざかり
豆粒になり
はるか
かなたでふっと
はじけてしまったのだと思えてくる
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R.I.P.,encore.