今日見たのは、
去年の11月18日に公開予定だったものが、
その5日前に起きた、
あのパリのテロの影響で公開が延期になり、
結局公開されないまま、
DVDとして発売された作品、
Made in France
です。
ほとんどの場合、
映画は現実の半歩後ろを行くものですが、
この作品は、半歩前を描いていたわけですね。
https://www.youtube.com/watch?v=XRTCxKPRr9s
主人公サムは、
父親がアルジェリア系の労働者、
母親はフランス人女性、
そして彼自身はムスリムで、
フランス語もアラビア語もできるジャーナリストです。
彼は、自分の置かれた文化的状況を活用し、
イスラーム過激派集団(ジハーディスト)に潜入調査を開始します。
もちろん、他の人には書けないルポルタージュをものするつもりなのでしょう。
サムの仲間は3人。
アフリカ系で、気のやさしいシディ。
やはりアフリカ系で、きわめて気の強いドリス。
そしてヨーロッパ系白人で、
その両親はブルジョワ&カトリックであるクリストフです。
(クリストフは、ユセフと改名します。)
そしてここに、パキスタンで訓練を受けた、
見るからに目がヤバイ男、ハッサンが帰ってきます。
彼はこのチームのリーダーに収まり、
テロ計画の実行を企てます。
計画が進む中、ある小さな事件の際、
血迷ったユセフが警察に発砲したため、
結果シディが警官に射殺されます。
一番気のやさしかったシディが……。
恐れを抱いたサムは、
ついに警察に駆け込み、経緯を話し助けを求めますが、
警察は、
おまえは共犯だ、
免罪してほしければ、ほんとのリーダーが誰か突き止めてこい、
と迫ります。
<この後ネタバレします。>
その後、「上」から計画がハッサンを通して伝えられます。
標的は、なんとシャン・ゼリゼです。
サムは焦りますが、
「上」は誰なのか、
ハッサンは決して語りません。
そして、一番攻撃的に見えたドリスが、
別れた妻が引き取った娘への思いから、
シャン・ゼリゼ攻撃を拒否します。
「警察でも軍でも国家施設でもかまわない。
でも、子供を殺してなんになる?」
と言うのです。
ハッサンは、説得を試みますが、
それが無駄だと悟ると、彼を殺してしまいます。
(とここまでくると、赤軍派の内ゲバが思い出されます。)
そして計画のXデーが迫る中、
ついにサムの正体がハッサンに露見してしまいますが、
その中でわかったのは、
実は「上」など存在しないこと。
アラビア語さえできないハッサンは、
いかにも背後に巨大組織があるフリをしながら、
4人を自分の計画に利用していただけだったのです。
彼は、コーランさえ、ほんの一部分しか知らないのです。
警察が駆け付け、
危機一髪サムは生還しますが、
ハッサンは射殺、
ユセフは自作の爆弾の犠牲になります。
サム以外、全員死んでしまったわけです。
この映画は、こわいです。
それは、テロの怖さと、
人間が陥る狂気の怖さです。
以前、Ne m'abandonne pas という映画について書きました。
http://tomo-524.blogspot.jp/2016/05/ne-mabandonne-pas.html
こうした映画が連続して作られること自体、
いかに今が、テロの時代かということを物語っているのでしょう。