最終的には映画の話になるんですが、
まずは、これが何のためのアプリの紹介か、
お分りになるでしょうか?
20秒です。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=HlO1VnykBBE
実はこれ、イランでヒットしている、
Gershad (ゲルシャッド)というアプリです。
あの厳しい風紀警察と出会うのを避けるため、
検問場所をみんなで共有しようということなんですね。
これを踏まえて、この記事、
「イランにもいるギャル系・おしゃれ女子 風紀警察と駆け引き」
https://withnews.jp/article/f0160831004qq000000000000000W03510801qq000013913A
を読むと、
イランの雰囲気がだいぶ伝わってくる気がします。
特に、この記事の中で訳されている、
スーパーでの告知は興味深いです。
コピペします。
「タイト、スキニー、スケルトン、体の前面でボタンどめされていないコート、
不道徳な図柄、悪魔主義のシンボル、
米国・英国・イスラエルなどの国旗、
ダメージジーンズ、
クロッチの小さなジーンズ、
不適切なブランド名や表現を配した衣類の提供は禁じられている。
衣類組合の監察官が監視し、
違反があれば当該の衣類は没収、提供した店舗は法に従って処分を受ける」
アメリカ・イギリス……あたりのくだりと、
ハリウッド好きということのギャップが、
まあ、イランの現在の形だと言えるのでしょう。
で、ここまでが前置きです。**********************************
今日見たのは、
Circumstance (2011)
というイラン映画です。
(わたしはフランス語字幕版で見ました。)
https://www.youtube.com/watch?v=OH5EAyvlwso
舞台はテヘラン。
主人公はAtefeh と Shireen 。
2人は16歳の女子高校生で、恋愛関係にあります。
Atefeh は、お金持ちで、
自由主義的な家庭のお嬢さんですが、「ギャル」です。
父親は、革命(1979)前の1976年、
カリフォルニア大学(つまり「アメリカ」)への留学経験があります。
(ホームパーティーで、
「バークレー仕込み」のカクテルをふるまうことも。)
また曲者なのが彼女の兄で、
麻薬に溺れ入院していましたが、
今家庭に戻ってくると、
狂信的な信者に変貌していました。
そしてその後彼が、
風紀警察にスカウトされるのです。
Shireen のほうは、両親は教員だったのですが、
反革命的文章を書き、亡くなっています。
(投獄されて死んだ、という意味なのでしょう。)
今は叔父の家に住んでいるのですが、
この叔父は、「ギャル」の彼女を結婚させることに躍起になっています。
2人の少女は、
いっぱしの「ギャル」として、
夜な夜な遊び回ります。
そこには、
ゲイの友達(←イランに居場所はありません)だっています。
お酒もヤクもやるし、
クルマの運転だってやっちゃいます。
(パーティーで乾杯する時は、「ハリウッドに!」)
でもある夜、捕まるのです、
風紀警察に。
警察に迎えに来たAtefeh の父は、でも、それほど怒りません。
若さとは反抗だ、と言ったりさえします。
ただ Shireen の叔父は、
より一層結婚を急ぎます。
そして、彼女は結婚せざるを得なくなります。
相手は、
ずっと彼女に妄想を掻き立てていた、
あの Atefeh の兄です。(キモイ男です!)
レズビアンの2人は、
この状況をどう抜け出すのか、
それとも、抜け出せないのか……
というお話。
イランの状況が、
美しい二人の少女を通して描かれ、
飽きるところがありません。が、
ラストに向かっては、
あの兄のファナティズムが、
映画にやや重い陰を落とします。
でもそれは、監督の意図したことなんだと思います。
青春映画であり、
レズビアンの映画であり、
父と息子の、
父と娘の映画であり、
宗教と近代の、
女性の権利の、
革命と自由の映画でもあります。
おもしろかったです。
*Shireen 役を演じたSarah Kazemy は、
フランス生まれフランス育ちで、
イランとフランスの二重国籍。
とても聞き取りやすいフランス語です。
https://www.youtube.com/watch?v=OL8Y9T-6oHM
また、イランの少女たちにとって、
おそらく最も身近な憧れの、そして「自由」の街は、
「ドバイ」なのだと知りました。