2021年7月18日日曜日

『泥の沼 '97』


というわけで、

『泥の沼  '97』

見終わりました、と思ったら!
なんと、わたしが見ていたのは「シリーズ2」でした。
まあ、「シリーズ1」からは(一応)独立した作品なので、
十分楽しめたわけですが。
というか、とてもいいドラマだと思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=Zr6d7j8Erxw (英語吹き替え版ですが)

舞台は、1997年の、ポーランドの田舎町。
ここで、ある大雨の夜堤防が決壊し、
町の一部が洪水に巻き込まれ、大きな被害を受けます。
で、その堤防がある森で、
12歳の少年の遺体が発見され、
事故による溺死、として処理されかかるも、
ワルシャワから転勤してきたばかりの女性刑事が、
その処理に不信感を抱き捜査を始めると、
その背後に、そしてそのまた背後にと、
大きな企みが横たわっていたことが分かってきて……
というお話。

このドラマ、
まずなんと言っても、絵がきれい。
バシッと決まっている絵に何度も出会いました。
画質もいいし。
そして女性刑事。
けっしておしゃべりじゃなく、
その意味ではハードボイルドなんですが、
物語を追ううちに判明するのは、
彼女がレズビアンだということです。
(彼女がワルシャワを追われたのも、
母親と上手くいっていないのも、
どうやらこれが原因です。)
また彼女は、ロマ人の祖母を持ち、
彼らの言葉がしゃべれるのです。
これはおそらく、ポーランドにおいては、
二重にマイノリティーだということを意味しています。
(そこに「女性」も加えれば、
三重にマイノリティーだということになります。
実際同僚から、「女性」であることを揶揄されるシーンもあります。
以前、ホモセクシャルでアルビノでユダヤ人、
というアフリカ系ミュージシャンが、
自分は国では三重のマイノリティーなんだ、
と語っていたことを思い出しました。)
この女性刑事、
ふんふんという感じの笑顔も、
怒ったときの冷たい感じも魅力的。
無駄に「サーヴィス・ショット」がないのも好感が持てます。
着ているものも、
男性から見て「女性的」なものはほとんどありません。
もちろん正確に想像することはできませんが、
こんな女性が 1997のポーランドにいたら、
苦労するだろうなと思ってしまいます。

そして大事なこと、
実は、洪水に絡む事件と並行して、
過去の事件も掘り起こされるのです。
過去とは、第二次大戦中、
その町はドイツ軍に占領され、
多くのポーランド人が強制労働にかり出されていたのですが、
戦況が変化し、
ソ連軍がやってきたのです。
ドイツ軍も、入植していたドイツ人たちも逃げ出しますが、
逃げ遅れソ連軍に捕らえられた人たちは、
悲惨な運命を生きることになります。
その中にいた少女は、
非ユダヤ系ポーランド人のカレシがいたのですが、
彼が、1997の物語に登場するのです。

ロマ人、ユダヤ人、
そしてドイツ軍、ソ連軍、収容所……
これらがドラマの深層に流れていて、
あ、ポーランドのドラマを見ている、
という気持ちになってきます。
言うまでもなく、
アウシュヴィッツは現在のポーランドにあります。

というわけで、
かなり手応えのあるドラマでした。
これから、シリーズ1を見ることにします。