ジャック・オディアール監督の、
『パリ13区』
を見てみました。
物語は、ものすご~くざっくり言うと、
いわゆる三角関係です。
まずは台湾系の女性。
彼女は祖母の持っているアパルトに住み、
無職ないしバイト中で、
シアンス・ポの出身だと言ってましたが、
たぶん冗談なのでしょう。
(あとのフォローがないので、曖昧なままなんですが。)
そしてアフリカ系の男性。
彼はイヴリーの高校のフランス語の教員で、
ただ今は、休職して上級資格の試験準備中です。
最後が(ノエミ・メルラン演じる)白人女性。
ボルドー出身の彼女は32歳で、
大学を中退した後、
叔父さん(と関係を持っていたわけなんですが)の不動産業を、
10年手伝っていたと。
そして今パリに出てきて、
トルビアック通りのパリ1に復学したところです。
ただ一方では、
(おそらくお金のために)
ネット上のポルノサイトでバイトしていて、
それが現実に影響を与えてしまいます。
99%モノクロの画面。
なので残りの1%は、どうしたって鮮烈です。
(エロティックなシーンですが。)
そしてそのモノクロの中で、
これはセックスについての映画なんだろう、
というつもりで見ているわけですが、
途中から、
もしかしたら愛についての映画かもしれない、
と思わされます。
この辺、
つまりセックスと愛の関係の、
前提となる一般的な捉え方自体が、
アジアとヨーロッパではかなり違うので、
となるとこの映画の受け取り方も、
ずいぶん違うんだろうという気がしています。
で、映画としてどうなのかというと、
どうかなあ、
という感じで見ていましたが、
見終わってみると、
悪くないな、と思いました。
(『パリ、ただよう花』
よりだいぶいいと思います。)
ただ……
この映画のHPを見ると、
「誰も見たことのないパリがここにある」
なんて書いてありますが、
もちろんこれは、いくらなんでもムリがある、と言うべきでしょう。
この映画の原題は、
Les Olympiades Paris 13e
なんですが、
このオランピアッド地区については、
多くの本で言及されています。
(『エキゾチックパリ案内』でも、
わりと詳しく紹介しました。)
また、「描かれた」というレベルで見ても、
この地区は多くの映画に登場しています。
アクセスしやすいのは、
『パリ、ジュテーム』の中の「ショワジー門」でしょう。
この映画の舞台は、
最初から最後まで(「ショワジー門」じゃなく)オランピアッドです。
それ以外にも、ドラマ
Paris etc.
これ、好きなドラマでした。
そして2003年のこの映画、
そして以前論文も書いた
それからこれも。
それからこれも。
もちろんこれですべてではないでしょう。
(ウェルベックの小説の主人公も、
オランピアッドではないにしても、13区に住んでたし。)
というわけで、「誰も見たことがない」は、
たとえ宣伝文句であっても、いくらんでもムリなのでした。