歌の良し悪しはよくわからないけれど、でも歌を読むのは好きです。最近、たまたま本屋で見つけて、とても教えられたのは、『短歌の友人』(穂村弘)という本。
これは、自身も歌人である著者が、これまでに出会ってきた短歌の中から、これはと思うものを、しかもさまざまな切り口で紹介してくれた本です。孫引きで恐縮ですが、たとえば巻頭のこんな歌;
電話口でおっ、て言って前みたいにおっ、て言って言って言ってよ (東 直子)
おもしろ~い! じゃあこれは;
173cm51kgの男憎めば星の匂いよ (山崎キョウコ)
ぐっときますね? じゃあこれは;
カップ焼きそばにてお湯をきるときにへこむ流しのかなしきしらべ (松木 秀)
この歌について穂村氏は、「こんなみじめな悲しみに出会ったのは初めてだ」と書きます。そしてもちろん、この本で引用されている歌の中には、わたしの好きな歌人の歌もありました。たとえば、斉藤斉藤。(打ちまちがえじゃないですよ。斉藤×2です。)これは引用はされていませんが、わたしが好きなのはたとえばこれ(『渡辺のわたし』より);
セブンイレブンからのうれしいお知らせをポリエチレン製で無害の袋にもどす
この瞬間に、立ち会ったことがある気がします。じゃあもう1つ。
牛丼の並と玉子を注文し出てきたからには食わねばなるまい
ほら、もう明日から、この歌を思い出さずに吉野家のカウンターに座ることはできません!(それにしても、「食欲」ってなんなんでしょうねえ?)ああ、最後のつもりだったのに、牛丼で思い出した句があります。今度はちょっと古くて、室生犀星(むろうさいせい)。
白粥(しろがゆ)に たまごがひとつ おはします
これは、実家で「卵かけごはん」を食べるとき、父親と弟が、いつも呪文のように唱えていた句です。今ではわたしも、これなしに「卵かけごはん」を食べることはできません。やっぱり、歌を読むのは楽しいです!