2010年11月23日火曜日

『ある日』


今日の東京は、午後には日差しもあって、なかなか気持ちのいい日でした。

そして今日は、仕事も一段落した(ことにした)ので、
楽しみにしていた本を開くことにしました。
木坂涼さんの新詩集、『ある日』です。

木坂さんの詩は、ほんとに日常的でありながら、
その日常が波のように広がっていきます。世界のほうへ。
そして読む者の胸には、あたたかさが残ります。
(あたたかさ、は、さびしさ、と言い換えられます。
なんといっても、わたしたちは生きてるんですから。)

この『ある日』も、まさにそんな詩集。
すべての詩が、

ある日、

から始まります。たとえば、

ある日、
私は改札を出て傘をひろげた。……

とか、

ある日、
「あさって夕方からカレーパーティーをするから、スプーンを
持って参加して」と大学の学食で誘われた。……

あるいは、

ある日、
私はメンフィス動物園にいた。……

さらに、

ある日、
私は猫を風呂に入れた。……

「……」の部分には、時に淡彩、時にカラフルに、人が、生き物が、
時間が、空間が、さまざまに生きています。

この詩集を読んだきっと誰もが、
その人の「ある日」をたどり、思い出し、重ね合わせるでしょう。
木坂さんは遠くにいて、わたしたちの思いに耳を澄ませくれているでしょう。

さらりとしたカバーの紙質、箔押しされた「ある日」。
何度も撫ぜてしまいまいた。

http://www.shichosha.co.jp/newrelease/item_263.html