2021年6月15日火曜日

Édouard et Caroline

大学院のジャック・ベッケル特集、
今週は、

『7月のランデブー』(1949)
『エドゥワールとキャロリーヌ』(1951)

を見てみました。
前者はこれです。


これはスピード感のあるおもしろい映画です。
パリの中心部が何カ所か出てくるわけですが、
周辺への視線はありません。

で、後者。
これは物語は単純で、
エドゥワールとキャロリーヌの若い夫婦の、
喧嘩したり仲直りしたり、を描いています。


エドゥワールは、売れないピアニスト。
インテリなのでしょう、百科事典を大事にしています。
キャロリーヌは、大ブルジョワを叔父に持ち、
でも周囲の反対を押し切り、
「身分違い」の結婚をしているわけです。
若いし、ドレスも、おしゃれも、ポップスも好き。
ただ、フランス語を書くときに、
複合過去時制において、過去分詞を、
「間接」目的語に性・数一致させたりもします。
(すぐに気づいて直しますが。そしてこの部分、
字幕では一切説明がないので、
フランス語を勉強していないと、意味がわかりにくいでしょう。)

若い妻は、夫のために、
叔父にパーティーを開いてもらったようです。
そこに、叔父のブルジョワ仲間を呼び集め、
エドゥワールに演奏させることで、
今後彼に仕事が回るようにすることが目的です。
ただ…… この計画は頓挫しかけます。
エドゥワールが、喧嘩したままの妻のことが気にかかり、
演奏できなくなってしまうからです。
でも最終的には、
スペンサーと名乗るアメリカ人実業家が、
彼の窮地を救うことになります……

つまりこの映画は、
ブルジョワ階級と中間層が、
文化を基盤として協働を目指すも困難が多く、
それを、「アメリカ」が援助し、支えていく、
という構図だと読み取れます。
『7月のランデブー』では、
主に(広い意味での)文化を通して、
若者たちに広く浸透していた「アメリカ」が、
今度は、
資本として、
きわめて具体的で即物的な存在として、
目に前に現れる、という感じでしょうか……
というようなことを、
院生たちを話し合ったのでした。

ちなみに、エドゥワールを演じたのは、
『7月のランデブー』でも主役だった、ダニエル・ジェラン。
そしてキャロリーヌ役は、
後に『シェルブールの雨傘』で、
ヒロインの母親役を演じたアンヌ・ヴェルノンです。
彼女が演じるキャロリーヌは、とても魅力的です。

そうそう、『7月のランデブー』のほうで、
上手くいくカップルの男性を演じたのは、
なんとあのモーリス・ロネ。
『鬼火』で主役、
『太陽がいっぱい』では、
アラン・ドロンに殺される青年を演じていました。
この『7月のランデブー』が、
彼のデビュー作です。