2022年2月3日木曜日

『イカした人生』

MFFF 5本目、

『イカした人生』(2020)

を見てみました。
ベルギー映画です。
(原題は La vie démente 。
dément は意味が多様ですが、
オックスフォードによれば、
基本は mad, insane で、
文脈によっては fantastic や amazing にもなると。
Petit Robert には、familier として、
extraordinaire もあるので、
ここではその方向で訳しているのでしょう。)


夫婦がいて、そろそろ子どもをもとうとしている矢先、
夫の母親の「ぼけ」が始まり、
しかも急速に悪化していく中で、
夫アレックスは、子どもを持つ自信をなくしていき、
もう、生活の大部分が母親の世話に当てることで、
そのほかを顧みなくなり……
というお話。

もちろん、死と生を巡る物語で、
ほどけていく生としての死、
はリアルに伝わってきます。
アレックスは、視野は狭いけれども善人で、
その妻ノエミは聡明な人。
彼女が、この映画を救っているように感じます。

1つ、これは日本とは違うなと思ったのは、
ノエミとその両親が待っているところに、
病状が進んだアレックスの母親が、
紙パンツだけ付け、
上半身は裸で現れる場面。
この事態に、ノエミも両親も、
さらにはアレックスも、
なんだか、微笑ましいいたずらでも見つけたみたいな反応をするのです。
あわてて怒ったり、
極端に恥ずかしがったり、
隠したりとかいうのではなく。
もちろん、
これによって周囲の心理状態も表現されてはいるのでしょうが、
なかなか日本だとこうはならないような。

佳作、という感じでしょうか。