正直なところそんなによくなかったレア・セドゥ。
(『アデル、熱い色』や、『ダブル・サスペクツ』はよかったけれど。)
彼女が、007 の直前に主演した映画、
France (2021)
を見てみました。
レア・セドゥ演じるヒロインの名前が France de Meurs で、
この映画は彼女の肖像なのでしょうが、
当然、「フランス」の肖像でもあるはず、
と思って見始めました。
フランスは、超人気ジャーナリストで、
作家の夫と小学生の息子がいます。
彼女が一歩外に出れば、
スマホを片手に
Je peux ?
と写真をせがむ人が後を絶ちません。
フランスには、フランスを知らない人はいないようなのです。
ただ彼女のジャーナリストとしての姿勢は、
褒められたものではありません。
真摯さがなく、演出過剰で、
なにより彼女の自己愛が満たされることが重要なのです。
そして、それに気づいた政治家などからは、
オレたちは同じ穴の狢だ、と指摘されたりもします。
であるとき彼女は、よそ見運転をしていて、
配達のバイクをはねてしまいます。
(渋滞中で、スピードは多分10kmも出てませんでしたが。)
轢かれたバイクの青年は、
移民系の貧しい両親とパリ郊外で暮らしており、
それを見たフランスは心を動かされます。
そして、テレビを辞めると言い出すのです……
2時間以上ある映画で、
見ていて「長い」と感じました。
話の展開はどこか気まぐれで、
深まりません。
審美的な映像を多用し、
それはたしかに「美しい」んですが、
この映画に必要なのかどうかは分かりません。
そしてもし、これが「フランス」の肖像でもあるなら、
それは、感情的で、自己中心的で、華やかさが好きで、
偽善的なのに傷つきやすく、甘ったれた何ものか、
ということになるでしょうか。
現実のメディアの評を眺めると、
毀誉褒貶なのが興味深いです。
カイエ・デュ・シネマやル・モンドは5/5なのに、
オプセルバトゥールも、
(右寄りの)ル・フィガロも1/5です。
わたしは、カイエ
(監督はカイエと近い立場のようです。)
とはたいてい違う意見になりますが、
ル・モンドとは近いことが多いので、
ちょっと意外でした。
(もちろんル・モンドと言っても、
複数の担当者がいるのでしょうが。)
日本で公開されても、
それなりに興行成績は上がる気もします。
レア・セドゥだし、
彼女が次々に着る服はとってもおしゃれだし、
日本ではその辺をウリにするのでしょうから。
メディア関係の女性の物語、ということなら、
こちらのほうがずっとおもしろかったです。